いないきみをみていない、今
詠井晴佳
いないきみをみていない、今
あなたにはわたしが見えるの? カーテンの不自然な隙間、あ、洗濯物
踏みつぶされる花みたいだ 境内の隅で咲いてた体育座り
盆提灯 見とれる子供が葡萄飴片手にきみをすり抜けて、夏
見えるの? と口開け固まる シャッターが切られてそれが季節になった
人に話したら噓になっちゃいそうで 空気をひとつ吞み込んでみる
校舎三階から見下ろすグラウンド 透明な肌に反射しない陽
合唱で誰も見てないAndante きみの寂しさに気付くゆっくり
両腕がハサミの怪物が昔いたんだって! 慈しむような目で
しないよね、成仏とかさ。する必要ないよ、映画とかタダで観れるし
学校に行きたくないんだ 行く権利ないきみは微笑んで、夏雲
今日もいつか思い出になる/遠いサイレン/わたしのこと、忘れないでね
感触はないけど手繋ぐ 意味じゃない二人の足を波がさらって
夢から醒めてもなんだか夢の中みたいですこし怖「大丈夫だよ」
風吹いて飛んだ綿毛は陽炎の彼方 きみの顔、ジグソーパズル
きみのこと考えない日が二日あり 滴るアイスは手首を伝い
「久しぶり、まだ覚えてる?」茶化そうとして上手に笑えなかったこと
二人歩く そもそもきみは何だっけ? 振り返り、停止、ヒグラシ鳴って
ぜんぶぜんぶ幸せだったな、声がした 街路樹が人のかたちに見えた
検索履歴は「ネクタイ 結び方」 盆提灯のひかりが揺れる
いないきみをみていない、今 コンビニの過剰な明かりが誰かをさがす
いないきみをみていない、今 詠井晴佳 @kn_163
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます