第51話 異世界へ
邪神、暗黒神となったライトを倒した俺は人間界へと帰還した。
闇の軍勢は邪神が倒れたことで消滅していて、人間界での戦いも終結している。
帰還した俺は4S
戦っていた兵士だけでなく、ライトが命を奪った聖王国の住人も全員復活を遂げ、聖王国も俺たちが立ち上げた連邦に加入する事となった。
俺たちは聖王国で祝勝会と人間界が一つになった祝いの宴を開いた。
宴は一ヶ月続き、途中で魔界の生き残っている魔族も招待されるが、人間と魔族の確執はもはや存在せず、ジン・シュタイン・ベルフの名の下に人間界と魔界が統合して新たな界の名を作る。
異なる生物が手を取り合う世界、異世界と。
連邦の盟主である俺は、各国の軍を解体して警察組織を結成。
警察組織のトップにグレン・マーク・サーベインを置き、異世界の治安を維持する組織とした。
軍を解体して、また闇の軍勢のような敵が現れたらどうするのかと話もでたが、俺がいれば問題ないだろ発言で丸く収まった。
各国のインフラを整え、ある程度の法案がまとまったところで、俺はラミアに盟主の座を渡して、一人で異世界の旅に出かけた。
――――――――――
♢
ジンが旅に出かけて二年の月日が流れた頃、ホークが経営する異世界亭にみんなで集まっていた。
「ジン様ったらいつになったら帰ってくるのでしょうか。いつなんどきジン様が帰ってきてもいいように、妾はいつでも体も心も綺麗にして、お帰りをお待ちしているというのに」
ジンのことになると頭が回らないラミアだが、政には長けており上手く異世界をまとめていて、異世界の民や家臣からは絶対の信頼を得ている。
「――たぶん、異世界の、お酒、全種類、飲むまで、帰って、こない」」
ナタリーは魔法研究所の最高責任者を務めており、生活に役に立つ様々な魔法を開発している。
今の異世界はナタリーのおかげで、一般人ですら簡単な魔法を使用する事が出来る。
中級、上級の魔法は免許を持つ者しか使えないようにしているので、魔法を使って悪事を働く事はほぼ不可能となっていて、魔法免許の発行も魔法研究所で行っている仕事の一つだ。
「ジン様はお酒の事しか考えていないんだわ! 私たちを二年もほったらかしにしても、なんとも思っていないのよ!」
グビっと酒を呷るエポナはもうできあがっている。
エポナは各国に孤児院を設立して、孤児院の統括理事長を務めており、王国軍から『青い稲妻』と恐れられたエポナは今では『
「エポナさん、あまり早いペースで飲むと、また大変な事になりますよ? お酒は嗜む程度がちょうど良いのですよ」
エポナの豪快な飲み方とは逆に、グラスに入ったカクテルを静かに口に含むミーシャ。
ミーシャは魔族管理局の局長を務めている。
人間と魔族が共存している異世界だが、まだ共存を始めて一年、ミーシャは小さな火種すら起こさないように管理をしている。
例えば、爪が長い魔物が人間と握手して傷つけてしまうかも知れない。
ミーシャは人間と魔族の友好の証は握手ではなく、エアタッチで行いましょうと提案して、連邦の議会で承認が下りたため許可された。
その後、人間同士が握手をする事もなくなり、異世界では握手の代わりにエアタッチが主流となった。
「よーしよしよし。泣かないでおくれよ、ベロベロバー」
赤子をあやす三帝騎士団、帝国重装騎士団長は大好きな酒を一口も飲んでいない。
「重装騎士団長、そんな怖い顔では赤子は泣いてしまいますよ? あやすとはこうするのです、ベロベロバー」
帝国魔装騎士団長が変顔をすると赤子は泣き出してしまった。
「魔装のは引っ込んでおれ! 泣いてしまったではないか!」
帝国重装騎士団長の大声に、赤子はびっくりして泣き声のボリュームがあがる。
「さぁ、こちらへいらっしゃい、私たちの可愛い坊や」
連邦王国第一王女のアーシェラが、帝国重装騎士団長の腕に抱かれている赤子を抱きあげると、赤子はすぐに泣きやんで笑顔になり、赤子を泣かした二人はホッとする。
「僕の血を引いてるんだから、そんなにすぐに泣いてちゃダメさ。ママのように超絶綺麗なお姉さんをゲットする為にも男は強くならないとね」
「パパったら恥ずかしい事をみんなの前で……」
帝国近衛騎士団長が赤子に話しかけると、赤子はキャッキャッと笑い声を上げる。
三帝騎士団は警察組織に組み込まれ、帝国近衛騎士団長は警備部隊長、帝国重装騎士団長は治安維持部隊長、帝国魔装騎士団長は公安部隊長を務めて異世界の平和を守るために貢献している。
「しかし近衛騎士団長が結婚するとは思わなかったぞ。アイツは自由奔放、縛られるのは嫌いだったと記憶しているんだがな」
ジンの盟友、連邦帝国の皇帝がカウンターで酒を呷る。
「なにも結婚は縛られるだけじゃないと思いますがね。皇帝陛下、空のグラスをこちらに」
「うむ、ありがとう。次はストロングモンスターをもらおうか」
ホークが皇帝のグラスにストロングモンスターを注ぎ終わると、異世界亭の扉が開いて鈴の音が鳴る。
仕事が終わったらくると言っていたグレンがきたのかと、ホークは扉まで出迎えにでた。
「グレンさん! 遅いですよ、みんなもうそろっ――」
「中々悪くない店だな、活気もあって雰囲気も良い。まずはこの店一番の酒をもらおうか」
店内の全員が聞き覚えのある懐かしい声に振り向き、一斉に声の主の名前を呼ぶ。
「ジン様!」
「お前たち元気そうだな。ほら土産だ、異世界を巡って見つけた酒湧きの泉の酒、こいつは一度飲んだら癖になるぞ。ナタリーには黄金リンゴだ、ホークに擦ってもらって飲むといい」
ジンを見た一同は目に涙を浮かべている。
「どうした? 宴はこれからだぞ。まさか主役の俺が来る前にへばったとか言うんじゃないだろうな? ヨシ! まずは一気飲みからいくか!」
ナタリー以外の全員のグラスに酒湧きの泉の酒が注がれ、ナタリーのグラスには黄金リンゴのジュースが注がれる。
「乾杯!」
乾杯で一気飲みをしたあと、ジンは全員に質問攻めを食らう。
どこに行っていたのか、女はできたのか、本妻は決めたのか、などジンの旅には関係ない質問もあったが、ジンはクククと笑い酒を呷りながら一つ一つ質問に答え、満足した一同はまた好きに飲み始める。
「――旅で、印象に、残った、人とか、いる、の?」
「印象? そうだな、神界から創造神が俺のとこにきたな。異世界の神になって助けてくれないかってな。どうやらロキが邪神になりかわって、神界と戦争をしているらしい」
「――ジン様は、神様?」
ジンは首を横に振り、酒を呷る。
「もちろん断ったぞ、こんな風にな」
ジンは立ち上がり、入り口の扉に人差し指を突きつけた。
「今さら助けてと言ってももう遅い」
工場作業員の俺が転生をして魔王になってみたら、配下が勇者達と手を組んで俺に罠をかけ、ただの人間に転生させられたので工場作業員のスキルを使って、とりあえず全員に復讐するわ~今さら助けてと言ってももう遅い 帝樹 @taikihan
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