第50話 暗黒神

 暗黒神となったライト。


「これが本物の神の力、虚無さえも暗黒に塗りつぶせる」


 ライトがオーラを放つと、真っ白の空間は真っ黒に塗りつぶされる。


「お前にかかれば神さえも、自分の道具にしてしまうんだな。それに本当に不意打ちが好きな卑怯な奴だ。何回目だそれ?」


 俺の言葉にライトは上機嫌で返事をする。


「卑怯? それは違うよ、効率よく事を進めているだけさ。時間、労力、損害を考えれば一番いい方法だと思うんだけどなぁ」

「効率、か。俺も以前は効率、結果至上主義だったが、過程も大事だと気づいたぞ」

「過程? そんなものは必要ない、結果だけが全てだよ。頑張りました、でも結果はだせませんでした。お遊戯会をやっているわけじゃないんだからさぁ。中身はどうであれ結果が重要なのさ」


 俺が以前の世界で派遣社員のリーダーをしている時に思っていた事を、ライトがまるで代弁するかのように語った。


「このまま話をしても平行線だな」

「だねぇ。決着をつけようか、ジン」


 神を殺す神聖剣を持つ二人がにらみ合う。


「「いくぞ!」」


 まず仕掛けたのは俺だ。


 ライトの神聖剣を持っている手を狙って切りかかる。


「考えることは同じだよねぇ!」


 狙いを呼んでいたライトは俺の剣を神聖剣で受け止める、が


 手に全く力を入れていなかった俺の神聖剣は弾かれるが、俺はそのままライトの懐へもぐりこむ。


「同じなわけないだろ!」

「ぶほぉっ!」


 間髪入れずに俺のアッパーがライトが顎に炸裂して、ライトが態勢を崩すのを確認した俺は弾かれた神聖剣を手に取る。


「終わりだ」


 神聖剣でライトを突き刺そうとしている俺の両手首を闇の手が掴んだ。


「その早さうざいなぁ。神級特異能力ゴッドスキル! 虚無ドカグイの暴食ニート


 闇の手に両手首を掴まれている俺は、ライトの神級特異能力ゴッドスキルを受けてしまう。


「デバフか? 体が重いが、まだ支障はないな」

「強がりかな? 神級特異能力ゴッドスキルを受けてただで済むはずないさ」


 対象の速度を著しく下げるデバフを受けたが、能力ステータスがカンストしているため影響は少なかった。


「邪魔な手だ」


 思いっきり両腕を引っ張ると、俺の両腕を掴んでいた闇の手がちぎれる。


「次は俺から仕掛けようかな。神級特異能力ゴッドスキル! 虚無カオマッカの憤怒ニート!」


 ライトは自らの能力ステータスを極限まで強化した。


「まだだよ。神級特異能力ゴッドスキル! 虚無スペルマックス色欲ニート!」


 能力ステータスを極限まで強化したライトが大量に現れた。


「これで終わりじゃないんだよねぇ。神級特異能力ゴッドスキル! 虚無モノゴイの強欲ニート!」


 ライト達の前に数え切れないほどの神話の武具が出現して、大量に現れたライト達は神話の武具を装備する。


「他の神級特異能力ゴッドスキルは、ほとんどジンには効果が薄いからこんなもんかな。どう? 神の力を見た感想は? 恐怖? 嫉妬? 絶望? それとも、逃げ出したい? こんなとこまで追いかけてきたのに逃げ出したい? アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」


 いつものようにライトの顔は狂気に歪んでおらず、真顔でアヒャヒャヒャヒャヒャヒャと笑い続けている。


「これぐらいの数、元工場作業員の俺がさばけないとでも思っているのか?」

「なにを言ってるか知らないけど、死んじゃえよぉぉ!」


 ライトの号令で、大量のライトたちが一斉に襲いかかってくる。


「見せてやるよ。元工場作業員の力をな! 神級特異能力ゴッドスキル! 工場ファクトリー閉鎖ダウン!」


 大量のライトたちは時間が止まったようにその場で停止するが、神聖剣を持っているライト本体の動きは止まっていない。


「な、なにをした!?」

「工場が閉鎖したら仕事もない。そいつらはまさしく虚無の存在となった」


 ライトは神聖剣を構え直す。


「神話の武具を装備させたのに目くらましにもならないか。やっぱり神聖剣でしか決着はつけれそうにないね」

「そうだな」


 ライトと同じく俺も神聖剣を構え直した。


「この一撃に俺の全て、神の力も全て注ぎ込む。多分この空間ごと消し飛ぶんじゃないかな?」

「気にするな。俺も全身全霊で剣を振る、こんな空間など簡単に消し飛ばすぞ」


 ハハハハハハと笑いあった俺たちは同時に剣を振るう。


「ジィィィン! 神級特異能力ゴッドスキル! 永遠の虚無エンドレスニート!」


「ライトォォ! 神級特異能力ゴッドスキル! 永遠にエンドレス再就職ハローワーク!」


 二人の斬撃がぶつかり合い、虚無の世界ニートランドは滅び去った。


 ――――――――――


 虚無の世界ニートランドが滅びる直前、俺は2S安全Safeエリアareaで絶対防御シールドを展開して難を逃れていた。


 滅びゆく世界で俺はライトが崩壊しかけているところを見つける。


「何度でも、何回殺されても、俺はお前を殺して見せる、ジン」


 滅びが始まっているライトだが、なぜかその顔には笑みが見える。

 ライトの中にあった闇も崩壊していたのだ。


「ああ、何回転生しても俺を殺しにこい、ライト」


 ライトの体はもう崩壊してしまい、顔だけが残っている。


「だが、お前にはまだ貸しがある。簡単に逃げれると思うなよ?」

「なにを……?」

「お前にいくら貸してると思ってる? 次会った時に返してもらうぞ。上級特異能力ハイスキル! 分解点検修理オーバーホール!」


 顔だけのこっていたライトは、空間に引きずり込まれ消滅した。


「次は友達になれるよな――ライト」


 俺は崩壊していく虚無の世界ニートランドから、神聖剣、天地開闢ビッグバンの剣ブレイドを使って人間界へと帰還した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る