続編④ オペレーション・トロイの木馬

 ヨハン、ハンナ、桃太郎の三人は、鬼を倒すための作戦会議を即座に開いた。


 桃太郎が言った。

「鬼は非常に力が強く、刀や槍などの武器では傷つけることができません。しかし、彼らにも弱点があるはずです。例えば、毒などはいかがでしょうか?」


「確かに。毒はありですよね」


 ハンナは、自分の村での経験を語り始めた。

「私の村では、ある種の植物の毒を使って、危険な動物を追い払っていたのです。その毒は、動物の体内で徐々に効果を発揮し、最終的に動物を弱らせるのです。」


 ヨハンは、ハンナの話に興味を持った。

「その毒は、鬼に対しても同じように効果があるかもしれない。でも、問題は、毒の効果があったとしても、どうやって鬼に毒を盛るかだ。」


 三人は、しばらく考え込んだ。


 その時、思いついたかのように桃太郎が話し始めた。

「問題は毒の盛り方とのことですが、思いついたことがあります。鬼も風邪をひくことがあるんですよ。前に、ある鬼が風邪をひいて、ひどく弱っていたことがありました。」


 ヨハンとハンナは驚いて、桃太郎を見た。

「鬼が風邪をひくって?」


 桃太郎は頷いた。

「そうなんです。その時は、私が看病をしたんですよ。」


 ハンナは毒の問題に話題を戻して提案した。

「鬼の食事に毒を混ぜるのはどうでしょう?鬼が食べれば、確実に毒を摂取できるはずです。」


 しかし、桃太郎は首を横に振った。

「いいえ、それは難しいです。鬼は非常に用心深いので、自分の食事に何か混ざっていないか、必ず確認します。食事に毒を盛るのは、ほとんど不可能でしょう。」


 次に、ヨハンが提案した。

「では、毒を塗った武器で鬼を攻撃するのはどうだろう?傷口から毒が入れば、鬼を倒せるかもしれない。」


 しかし、これも桃太郎に否定された。

「鬼の皮膚は非常に硬いので、武器で傷つけるのは難しいです。また、たとえ傷ついたとしても、鬼の再生能力は非常に高いので、すぐに回復してしまうでしょう。」


 ハンナは、毒ではなく他の方法を考え始めた。

 そして、ある考えを思いついた。

「そうだ、『人食いバクテリア』はどうでしょう?あのバクテリアは、人間の体内で爆発的に増殖し、人を死に至らしめました。鬼も風邪を引くのであればバクテリアが効果的でしょう。もし、あの『人食いバクテリア』を鬼に感染させることができれば...」


 ヨハンは、ハンナの提案に興味を示した。

「なるほど、『人食いバクテリア』か。確かに、あのバクテリアは非常に強力で危険だったが、鬼に使えば細菌兵器になるな。でも、どうやってバクテリアを鬼に感染させるんだ?」


 三人は、再び考え込んだ。バクテリアを鬼に感染させる方法が見つからないのだ。


 そこで、桃太郎が言った。

「そういえば、鬼は私のきびだんごが大好物なんです。鬼の祝い事があると、いつも私に大量のきびだんごを作らせるんですよ。」


 ヨハンとハンナは、顔を見合わせた。

「きびだんごだって?」


 桃太郎は頷いた。

「そうです。鬼は、きびだんごに異常なまでの執着があるんです。きびだんごを見ると、我を忘れて食べ始めてしまうんです。」


 その時、ハンナが閃いた。

「そうだ!きびだんごに『人食いバクテリア』を仕込むのはどうでしょう?鬼は、桃太郎のきびだんごなら、何の疑いもなく食べるはずです。」


 ヨハンも、その提案に賛同した。

「なるほど、それなら上手くいくかもしれない。好物のきびだんごにバクテリアが入っていると気づかずに食べれば、確実に体内から感染できるはずだ。」


 桃太郎も、二人の提案に頷いた。

「いいアイデアだと思います。実は、1ヶ月後に鬼の大きな祝い事が予定されているんです。その時に、大量のきびだんごを作るよう、鬼に命じられているんですよ。」


 ヨハンとハンナは、顔を見合わせた。

「1ヶ月後の祝い事?それは絶好のチャンスじゃないか!」


 桃太郎は続けた。

「その通りです。祝い事の日に、バクテリアを仕込んだきびだんごを鬼に食べさせれば、一気に感染させることができるはずです。」


 三人は、この作戦に大きな可能性を感じた。ヨハンが言った。

「この作戦の名前は、『オペレーション・トロイの木馬』としよう。古代ギリシャの戦術を参考にしたんだ。敵の心につけ込んで、内部から崩壊させる作戦だ。」


 ハンナは続けた。

「『人食いバクテリア』を、鬼専用に改良する必要がありますね。鬼の体内で効果的に増殖し、致命的なダメージを与えられるようにしなければ。」


 桃太郎も、作戦に意欲を見せた。

「祝い事までの1ヶ月、私はきびだんごの準備を念入りに行います。当日、鬼が少しも疑いを持たないよう、完璧なきびだんごを作り上げてみせましょう。」


 その時、ヨハンが『人食いバクテリア』の発生源について本で読んだことを思い出した。

「そういえば、『人食いバクテリア』の発生源について、興味深い話を聞いたことがあるんだ。」


 ハンナと桃太郎は、ヨハンを見つめた。

「発生源?どういうことですか?」


 ヨハンは説明を始めた。

「ある村で、牛が流産した時の汚物から、『人食いバクテリア』が発生したという話なんだ。もしかしたら、そこに鬼専用バクテリアを作る鍵があるかもしれない。」


 ハンナは目を輝かせた。

「なるほど!その汚物を研究すれば、より強力なバクテリアが作れるかもしれませんね!」


 桃太郎も同意した。

「それは良いアイデアだと思います。ヨハンとハンナには、その汚物を探して、鬼専用バクテリアを研究していただけませんか?その間に、私はきびだんごの準備を進めておきます。」


 ヨハンとハンナは快諾した。

「わかりました。我々は今すぐにでも出発します。『人食いバクテリア』の発生源の汚物を探し出して、鬼専用バクテリアの開発を成功させましょう。」


 こうして、ヨハンとハンナは『人食いバクテリア』の発生源である汚物を求めて旅に出ることになった。桃太郎は村に残り、着々ときびだんごの準備を進めることとなった。


 『オペレーション・トロイの木馬』の成功に向けて、三人はそれぞれの役割を果たすべく、行動開始したのだった。

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伝説の英雄が直面した絶望と後悔 藤澤勇樹 @yuki_fujisawa

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