後ろにいるのは

@hanakayuta

第1話 徒歩

 軽快な足取りで家路に着く。てくてくと歩いているとふと背後が気になりだした。誰もいない田舎道のはずだが視線を感じてしまう。気のせいだろうと思い込むことにして帰宅後のことを考え始める。やりたいことを思い浮かべる楽しさとは裏腹に視線に対する恐怖がこべりついて離れない。早く家に着いてしまおうと歩くペースを上げる。街灯の一つもない一本道を抜けていくと忘れ物をしてしまったことに気づく。忘れ物を取りに行くためには今来た道を戻らなければならないがどうしても振り返る気になれない。そのまま時間が5分、10分と過ぎていきいよいよ振り返る決意を固める。視界の端をゆっくりと背後に向けていく。お面が浮いている。自分の顔をしたお面が。呆気に取られているとお面は瞬時に干からびて風に乗って飛んでいってしまった。

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