思い出さないような事を

かにかま

このままで居よう、

雨上がりの空は僕を悲しくさせた。

綺麗だった。


まだ夜は寒くて君の体を揺らす。

君とおそりいの11mmと缶コーヒー。本当は甘ったるいカフェオレ。18歳。


大人って何なのか。ただ成人することなのか、責任を負うことなのか、過去の自分が恥ずかしくなることなのか。考え出したらキリがない。

だが、少なくとも「大人とは」を考えているうちはまだ子供なのだろう。

ずっと子供のまま生きていられたらなんて思う。そうすれば何だってできる気がするし、大きい夢だけ持って生きていきたい。いつも通る通学路でさえ輝いて見えたあの時の感覚でいられたらいいのに。

大人になんてならなければ君のこともずっと思っていられるのだろう。僕にはそれだけで十分だから、他にはもう何もいらないから、どうか今の僕を殺さないでくれ。


少しばかり考え事をしていると月が真上に登っていた。真っ白な三日月。見上げながら不安定な歩き方をする君の肩が僕の胸に当たる。

目線を下げると見える顔は今日はどこか苦しそう。


忘れ物を思い出して一旦帰ろうとするが君が消えてしまいそうで怖かった。煙と君は同じ。


歩く。青に変わる信号と歩行者を横目に進む。信号のない十字路は車通りが少なかった。

僕らに言葉は少しだけあればそれで良かった。何度も通り過ぎる電車の中は時間が経つにつれ人が減っていく。

髪の隙間から見える君の横顔と踏切の音。雨はもう降らないようで星を見せた。


誰も来ないでくれと願う。この手を繋いで忘れないでくれ。


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