第1.5話 長橋第三研究所にて

舞台は整った。

真実を明かす時が来たのだ。

最終確認のためパソコンと向かい合っている、長橋大輔ながはしだいすけは焦る気持ちを抑えながら手を動かしていた。

それは約20年前、あの時からすべては始まっていたのかもしれない。

ついに、





それは絶望なのか、失望なのか。

つかみかけた希望ひかりが崩れ去っていく。

あぁ、あの時もこうだったのかもしれない。

目の前で虚界きょかいへとつなぐ扉が


  「父さん、すまない。振出しに戻ってしまった」


思わず膝から崩れ落ちた。


  「長橋さん!急いで復旧プログラムを開始しましょう」

  「・・・いいんだ。もう、無理だ」

  「何言ってるんですか!?とりあえず、一旦マスコミを外に出しましょう」


助手やほかの研究員が何とかして再び虚界と扉をつくろうとする。


  「なっ、電源が落ちている。一体どうして電気の供給がないんだ」


なるほど。

そう来たか。こんなにも隠蔽したいとは。


  「ダメだ。もうやめるんだ。今はまだ、その時ではない。とりあえず、会見準備だ」

  

助手も私の意図を察したのか、動かす手を止めた。




犯人を突き止めるまでは、諦められない。


  

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虚界の中の君へ 庵野ゆたか @Anno_Yutaka

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