あきらと不思議な回転玩具館

星咲 紗和(ほしざき さわ)

プロローグ

雨が降る日の午後、あきらは偶然その場所に足を踏み入れた。街のはずれ、古ぼけた看板が風に揺れる小さなおもちゃ屋。その扉を開けた瞬間、彼の世界は変わった。


店内に広がるのは、無数のおもちゃが並ぶ回転レーン。色とりどりの玩具が、静かに、しかし確かに、次々と流れていく。それはまるで、子どもの頃に見た夢のような景色。青い恐竜、銀色に輝くロボット、木製のパズル…。あきらはただ立ち尽くすしかなかった。


「いらっしゃいませ、お客様」と、柔らかな声が彼を現実に引き戻す。声の主は人間ではなく、人に似せたAIロボットだった。表情豊かなその顔は、おもちゃ屋の不思議さをさらに際立たせる。


「こちらは不思議な回転玩具館です。お気に入りを見つけて、心ゆくまでお楽しみください」とロボットは言った。


あきらは少し戸惑いながらも、手に取った古びた木馬を眺める。その瞬間、木馬の彫刻が微かに動き、彼に微笑みかけたかのように見えた。


この場所はただのおもちゃ屋ではない。何かもっと大きな秘密を隠している。そのことを、あきらは直感的に感じ取っていた。そして、彼の冒険が始まろうとしていた。

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