第16話 影絵の森

あきらが次に訪れたのは、「影絵の森」と呼ばれる部屋。この不思議な空間は、壁全体がスクリーンとなっており、そこには絶え間なく変化する森の影絵が映し出されていた。


部屋に一歩足を踏み入れると、まるで夜の森に迷い込んだかのような感覚に包まれる。木々のシルエット、飛び交う鳥や虫の影が動き続け、その中を歩くことであきら自身も森の一部になったような錯覚を覚える。


中央に設置された小さなプロジェクターからは、手で影を作ることができ、あきらが動かす手や指が森の中の生き物として映し出される。彼は楽しく手の影を動かし、様々な動物や植物の影を作り出し、それに合わせて背景の森も反応して新しい影の物語を生み出していった。


この部屋の特別な仕掛けは、訪れる人の動きや影に反応して、常に変化し続ける森の生態系を表現することにあった。あきらが影絵を通じて動物を作ると、それに応じて森の他の影絵が自然な反応を示し、相互作用の美を演出する。


AIロボットがそっと語りかける。「影絵の森は、私たちがどのように自然と関わるか、またその影響を象徴的に表現しています。あなたの一つ一つの行動が、この森にどのように影響を与えるか、ご覧になれますね。」


あきらは影絵の森で過ごす時間が自然とのつながりを感じさせ、自分の行動が周りにどう影響を及ぼすかを実感する貴重な体験となった。部屋を後にする際、彼は自然との調和を大切にし、日常生活においても環境への影響を考える心を持ち続けることの重要性を感じていた。外の世界に戻ると、あきらは自分の影の落とし方に、これまで以上に気を配るようになった。

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