第2話 時間を忘れる部屋

あきらが店の奥へと進んでいくと、目の前には一列に並んだいくつかの扉が現れた。それぞれの扉には異なるデザインが施されており、それぞれの部屋が全く異なる世界を秘めていることを示唆している。彼の興味を引いたのは、星空を模したきらめく扉だった。手に取った木製の船を持ったまま、ゆっくりとその扉を開ける。


部屋の中は、外の雨音や街の喧騒とはかけ離れた静けさに包まれていた。天井からは星がきらきらと輝いており、床にはさざ波が映し出されている。あたかも夜の海にいるかのような錯覚に陥る。中央には大きな舵輪があり、その周りには様々な時代の海賊帽や航海日誌が展示されていた。


「ここは時間を忘れる部屋です。外の世界とは異なる時間が流れています。どうぞ、存分に楽しんでください」とAIロボットが説明する。あきらは船を手に、部屋の中を歩き始める。すると、床のさざ波がゆっくりと動き出し、部屋全体が軽く揺れる感覚に包まれた。


彼は舵輪に手をかけると、突然、部屋が船に変わり、星空の下を進む船に乗っているような感覚に陥る。海賊帽を手に取り、頭に乗せると、昔の海賊たちの声が聞こえてくるようだった。彼らの冒険譚が航海日誌から飛び出し、あきらの前で繰り広げられる。


時間の経過を忘れてしまうほど夢中になるあきら。しかし、ふと時計を見ると、外の世界よりも遥かに遅いペースで時間が流れていることに気づく。この部屋は本当に特別な魔法がかかっているのだと実感する。


冒険の終わりに、AIロボットが現れ、「楽しんでいただけましたか?ここでは、どんな冒険も可能です。また新しい物語をお求めなら、いつでもこの部屋へどうぞ」と言い残し、扉が静かに閉まる。あきらは手にした船を大事に抱え、部屋を後にした。外に出ると、再び現実の世界が彼を待っていた。

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