たまごが先かひよこが先か

椛猫ススキ

たまごが先かひよこが先か

 私がまだ幼稚園にも通っていなかったころのことだ。

我が家ではチャボを数羽飼っていた。

チャボは小さいにわとりの一種で、調べれると江戸時代くらいから愛玩用として飼われていたようだ。

 我が家は愛玩していたとは思えないのでたまご目的だったのではないかと思っている。飼いだした祖父と祖母がもういないのでわからないが。

 チャボのたまごは普通のにわとりのものとくらべれば小さい。

私はこれをなぜか子供用のたまごだと信じ込みよく食べていた。

たぶん、大きさからにわとりのたまごより小さい、小さいのはたいがい子供用だ、ならこれは私が食べる用のたまごだ!と、なったのではないかと思う。

あるよね、子供の謎理論。

 祖母は私が小さい時から料理をすることを良しとしていたので そのころから目玉焼きといりたまごは作っていた。

卵焼きの方が好きなのだがまだ味付けがよくわかっていなかったこととひっくり返せなかったので作ることが出来なかった。

もちろん、火を使うので祖母か母が近くで見守っている。

 その日は祖母がいたので私は目玉焼きを作ると言ってコンロに火を点けてもらった。

温まった小型のフライパンに油をちょろり、冷蔵庫から取り出したチャボのたまごをかるくぶつけて割る。

 中からは黄身と白身が…出なかった。

その時、私はおばけが出てきたと思った。

髪の毛みたいなものがべったり張り付いた白い肌に血管のようなものがうっすら見える気味の悪い何かがぢゅるりと出てきて、フライパンに落ちたのである。

 じゅわわわわわわわ。

熱されたフライパンで焼かれる得体の知れない、なにか。

「わああああああああああああああんんん!!」

 子供だったススキさん絶叫である。

楳図かずお氏の描かれる恐怖で叫ぶ顔と同じだったに違いない。

その時まで、私はたまごを割れば出てくるものは黄身と白身だと思い込んでいた。

しかし出てきたものは見たことのないものだった。

知らないものは怖い。

それが突然出てきたらどうなるかというと。

子供だった私は半端ない恐怖で漏らした。

いろいろ言い訳したいがもうこれは仕方ないと思っている。

いやほんとに怖かったんだって。

 なにかは油で焼かれ続けている。

じゅわじゅわ音を立てて。

どうしたらいいのかわからない。

驚きと恐怖で泣き叫ぶしか出来ない子供に祖母は

「親が孵してるの取ったかね。まあ、こういうこともあるべーよ」

と、フライパンを持ってどこかへ行ってしまった。

そう、それは孵る途中のひなだったのだ。

 おそらく、親鳥がたまごを孵すがその最中、祖母か母が持ってきて冷蔵庫にいれたのだろう。その時点でひよこは凍死してしまい、最終的に私が焼いてしまったのだ。

「よくあることだよ。そんなに泣くことでねーよ」

 泣きわめく私をあやしながらそう言うが逆にそれに恐怖を覚えた。

え、またあれ、出るかもしれないの?

ガクブル状態である。

2度とおばけなんか見たくない。

 それから、私はチャボのたまごが食べられなくなった。

祖母や母からいくじがないねえと言われるも怖いものは怖いのだ。

君子危うきに近寄らずだ。

それ以来、私は市販のたまごじゃないと嫌だと駄々をこねた。

市販のたまごは安全だからだ。

あんな思いはもうしたくない。

んだが、小学生のとき拾ったひよこが成長しにわとりなってたまごを産んだのだが、その時はあれはもう出ないよと家族に騙され普通に食べた。

新鮮たまご美味しかったです。

あほの子だ、私。


ちなみに、焼いたひよこもどきだが。

「おばあちゃん、あれ、どうしたの?お庭に埋めたの?」

「あ?あれはよく焼いてじいさんが醤油かけて食ったよ」

「え!?」

「鳥は食べられるんだから食うさね。戦争のときは食べるもんがないんだから食べられるもんはなんでも食うさ!!」

 へろりとそう返す肉嫌いの祖母が怖いのか、肉ならなんでも食う祖父が怖いのかわからなかった。

まあ、戦争体験者は違うなで終わらせたい。


調べるのは個人に任せるが、フィリピンやセブ島などで食べられているバロットと言う食べ物があるが出てきたのはあんな感じのものです。

閲覧注意、とだけ書かせていただく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

たまごが先かひよこが先か 椛猫ススキ @susuki222

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ