22

 二人は後先の事は何も考えず、食べられるだけその場で食べて、飲んで、お腹が落ち着くと、床に大の字に寝転がった。


「生きててよかったね」


 レイラの目には涙が一筋、目尻からこめかみに流れ、ゴーグルの中に溜まった。


「レイちゃんのおかげだね! ありがとう」


 絢翔あやとが満面の笑みでレイラに抱きつき、生きててよかったと、二人で実感し合う。何ヶ月ぶりかの笑い声が、倉庫に響き渡った。


『この温もりを守れてよかった』と、レイラの頭の中で誰かの声がしたが、レイラは母の記憶かもしれないと、気にもとめなかった。


「ねえレイちゃん、なにかあるよ。 大きい、綺麗。 なんだろう...人?」


 絢翔あやとは他にも残ってる食料や飲み物を集めるために、倉庫の奥まで行き、大きな棚に遮られ、完全にレイラの視界から消えていた。


「それは誰かいるよ。 他にも人がいたんだから」


 そう言い放ってから、レイラは自分の発言に違和感を覚えた。最後に大人の集団を見かけたのは、あの誘われた時だ。それ以降は見掛けることがなく、この倉庫にたどり着いた時も誰もいなかったのだ。

 いくら広大な倉庫と言えど、大声で笑い、倉庫に響き渡るほどの声に誰も反応しないのは、おかしいのではないのか。


 この倉庫の床は硬く、塔区とうく指定の靴音が鳴りやすいブーツでなくとも、歩けば靴音は響くだろう。


 レイラはその幼い頭に、父から学んだ事や、本で自ら学んだことを思案する。

 だが、思案している時間が無駄であり、レイラは急いで絢翔あやとの声のする方へと、倉庫の奥へと走る。


絢翔あやと、待って! 動かないでそこにいて、絶対に動かないで」


 その言葉にはレイラの祈りが込められていた。絢翔あやとのいるところに近付くにつれ、棚は更に荒らされ、砂利のようなものが落ちている。

 レイラの嫌な予感は加速する。


「レイちゃん、でもこれ、すごく綺麗だし動かないから大丈夫だと思うよ」


 あと少し、あと少しと、レイラは息を切らせ、絢翔あやとのいるであろう棚までたどり着き、立ち止まり膝に手をついて息を整える。

 絢翔あやとはレイラが来たのに気付くと、を指さした。

 そこには、人が横たわり死んでいるようだ。だが、レイラの背筋は凍てついてしまうかのような悪寒がはしった。


絢翔あやとこっちに来て。 転けないようにゆっくりね。 絶対転けたらだめだから、足元に気を付けて」


 絢翔あやとは困惑した。レイラの異常な緊迫した空気。息は荒く、顔はシアグル灯でもわかるほどに蒼白しており、絢翔あやとに差し出されている手は、遠目からでも震えているのが見てとれる。

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地球が蒼に染まる時、空に鳴く 藍染木蓮 一彦 @aizenkazu

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