21

 限界だと思い始めたある日、目が覚めるといつものうるさかった風音が止んでいた。

 レイラは慌てて絢翔あやとを起こした。隙間風も止み、寒さも少し穏やかになっていたからだ。


絢翔あやと、起きて! ご飯取りに行くよ」


 レイラはベッドから出ると、寒さに身震いしたが、我慢できるほどの寒さであり、防寒着を何枚か重ね着すると、着膨れして動きにくいが、震えは止まった。


「しんどいよ、レイちゃん。 ぼくまだ寝たい。 お腹すいてないよ」


 掛け布団を頭まですっぽり被り、絢翔あやとはぐずり、レイラを困らせた。


「死にたいの? 絢翔あやとは生きなきゃだめなの」


 無理矢理に掛け布団をひっぺがすと、腕を引っ張って座らせ、防寒着を何枚も着膨れするまで着込ませた。


 覚束無い足取りと、今にも倒れそうになりながらも、しっかり手を繋ぎ、以前と同じ食料倉庫にただ無心で歩みを進める。


 瓦礫に躓かないように、尖ったものを踏まないように、崩れそうな建物は避け、塔区とうく内の移動に使われるシアグル列車用の線路沿いを辿り、一時間ほど歩き通した。


 やっとの思いでたどり着いた倉庫は、以前二人が食料を調達した時より荒れた様子であり、シアグル灯で青白く照らされている。

 置いてある保存食も、あまり残ってはいない。


 だが、子供二人がしばらくの間、食べられる量はかき集めればありそうで、散乱はしているものの、飲み物もある。

 レイラは目に付く限り、残っている保存食をかき集めて絢翔あやとの元に運ぶ。

 すると、絢翔あやとの虚ろだった目が、ほんの少しだけ輝きを取り戻した。レイラもそうだ。

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