第6話『風邪ひいて 熱を下げろは 眉に唾』
コロ助は、濡れタオルを持つ母親に講義を続ける。
「お母さん、そもそもどうして風邪含め、いろんな感染症になると熱が出るかわかってる?」
「それは、ウイルスや菌が悪さするからでしょう?」
「つまりウイルス・菌が
「そう、じゃないの?」
「その認識はとんだ勘違いだよ、お母さん」
「えっ、嘘!?」
「体温が上がるのは、ウイルス自体の働きじゃなくて、体が、自ら、温度を上げるからなんだ」
「それってどう言うこと? 自ら痛めつけるわけ? そんなのドMじゃない!」
「ドMって何?」
「おっといけない。コロ助ちゃん、今のは忘れて? まだ無知のままでいて?」
「んー、まあいいや。話を戻すと、病気の時しばしば体温が上がるのは、体温が高い方が免疫機能が強くなるからなんだ。免疫細胞は、平熱時よりも発熱時に活動が活発になる」
「免疫って、そういう仕組みだったのね。お母さん、無知無知だったわ」
「だから物理的に冷やしたり解熱剤を使って無理矢理解熱するのは、耐えられないほど辛い、ひいては死ぬほどの高温でない限りは、かえって風邪を長引かせる悪手なんだよ?」
「えっ……そうだったのね。ちなみ死ぬほどの高温っていうのは……」
「摂氏四十度近い発熱の時は、解熱剤の使用も視野に入ってくる。人間の体を構成するタンパク質は四十二度以上になると元の構造が変性して、凝固、機能しなくなるんだ。一度変性したら二度と元には戻らない。生卵とゆで卵の関係と同じだよ」
「そっか。それなら発熱の時は、体温の変化を細かくチェックする必要があるわけね。解熱剤の使用も、見極めが大事……」
「うん。それで今の僕の場合、命に危険に関わるような発熱じゃない。三十八度くらい。だから、その濡れタオルも、せっかく用意してもらって申し訳ないんだけど、解熱目的なら必要ないんだ。でも、代わりに体を拭くのに使わせてもらうね、昨日はお風呂に入ってないし」
「そっか。じゃあ、お服脱ぎ脱ぎしてくださーい」
「もう、子供扱いしないで!」
「頭脳は大人並みでも、見た目はまだまだ子供よ、おませなコロ助ちゃん♪」
That's 愕然の事実 加賀倉 創作 @sousakukagakura
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