HDMI診断ツール

水乃 素直

HDMI診断ツール

 STB(スターバックス)で友人が一言述べた。

「最近話題のさ、あれ、やってみたんだよ。HDMI診断……? やってみたよ」

「HDMI?」

 それって、テレビをつなぐケーブルじゃないのか?

「そうそう。HDMI」

「いや……あの…ADHDとかmbti診断とかじゃなくて?」


 友人はあっさり否定した。

「違うよ。ADHDは自己診断できないしさ、HSPとかも気質じゃん。mbti診断も、どうせ血液型占いと変わらないでしょ。信ぴょう性無いよ、それこそ別に医者の診断書もらうわけじゃ無いし」

「え……まぁ、確かに」

 友人の流れるように出てくる否定に押されつつも「いや、そこまでしてなぜHDMIの診断を? てか、そもそもなにそれ?」

 俺の疑問に答えきらない友人は喋り続けた。

「やっぱり、専門家に診断してもらうことが大事だよ。家に液晶があっても、HDMIケーブルが何本要るかはちゃんとアドバイスもらったほうがいいよ」

「そうか? お前の家、液晶とパソコン一台なら一本でいいだろ?」

「いやいや。分かってないよ、チミは」

 ADHDとかはあっさり否定したのに、なぜケーブルについて熱弁するのか、不審に思った。



「とりあえずやってみてよ」

 俺はスマホで「HDMI診断」と検索した。

「その一番上のやつでいいから」と言われ、簡素なデザインで作られたホームページには、今時に古すぎる「あなたは35679人目の訪問者です! ※キリ番踏み逃げ辞めてください!」と書いてあった。いやいやいや、古すぎるだろ。友人は言った「そこはいいからさ、早く診断しなよ」


 スマホの画面には、生年月日、性別から始まり、「家にテレビは何台ありますか?」「スマホの映像を大画面で見たいですか?」等の質問に答えていった。

「愛は必要だと感じますか?」「はい」

「緑茶」「はい」

「高校生の目指す、インター」「はい」

「そして輝く、ウルトラソウル」「はい」

 ……全然関係ない質問ばっかだな。



 そうこうしていると、質問が全て終わり、小さな丸が円状にくるくる回り、

 HDMIケーブル診断の結果が出た。


 その時、体に電撃が走った。

 ぐるん。うずのように回転して、ぐるん。目の前を赤と白と黄色の光が点滅し、回転した…俺、あのケーブルでスマブラしてたな……64のやつ……。

 平衡感覚を失い、一周して戻った。




 画面はパチンコのフィーバータイムのように輝きながら結果を映した。『5本!!』




 ……ん? 俺は一体…?


「新NISAとかやってる?」

「な、なに? しん、にーさ?」

「何にも分かってないじゃん」

 その瞬間、俺は新NISAのことを知らなければならないと思ったし、実際とても魅力的に感じた。

 ……Ujin、いや友人の話になるほどと、HIZAを打ちながら、新NISAで、資産形成、いやむしろ、ポートフォリオの形成、KEISEIというべきか。

 納得した俺はwktk しながら帰路に着いた。

 俺はIEに帰り、SWerをabて、mesi食ってbッdにnt。

 言語野がカタカナに支配されて、ゆっくり眠りに落ちていった。

 これがHDMIsndnツールなのだと。



 俺の背中には、ぶっとい一本のHDMIケーブルが挿さっていて、そのケーブルの片方は、部屋の扉をくぐって、遠く遠くに伸びていたのであった。

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