俺の肋骨、折れてないよな?

 通りの端で隣の仲間と喜びを分かち合う兵士達が見える。

 どうやら戦いは終わったようだ。


 とても疲れた。

 そういうことなら、俺は帰ろう。


 宿に戻る途中、ふと振り返ると遠くに見える山のてっぺんから光が見え始めた。

 日の出だ。


「ああ・・・綺麗だな・・・」


 写真に撮ってアリミナとセレクタにも見せてやりたいくらいだ。今手元にカメラが無い事が悔やまれる。そういえばこの世界にもカメラはあるのだろうか?


 そんなことを考えながら景色を眺める。

 帝国軍の強襲から始まった長い一夜がようやく明けた。






「━━━━━おかえりなさいなのだわぁぁ!!」


「ふぐぅっ!?」


 『プリンセスホテル』の206号室、その扉を開けた瞬間俺のみぞおちに衝撃が走った。


「い、息が・・・」


 飛び込んできたのは前回同様アリミナだった。

 倒れた俺に彼女の金色の髪がかかってこそばゆい。


「ああ・・・!!ごめんなさい!私、また・・・」


「だ、大丈夫、大丈夫だ・・・」


 アリミナへ向けてではなく、自分に暗示をかけるように声をしぼりだす。


 アリミナってこんなに力強かったか・・・?

 これは・・・ちょっとシャレにならない・・・!!


「ほんとにごめんなさいなのだわ・・・」


「俺は大丈夫だから。ほら、部屋入ろう」


 申し訳なさそうに立ち上がるアリミナを横に、俺は努めて何でもないように振る舞う。


━━━━ッ!?

 突然、扉の奥から重く冷たい気配を感じた。

 恐る恐る玄関に上がると黒い髪の少女、セレクタがいた。


「ん・・・」


 俺を見るなり手を上にあげて万歳のポーズ。

 俺は無言で彼女を持ち上げハグをする。


「おかえりなの・・・」


「ああ、ただいま」


 既視感のある流れを終えたところで俺はあることに気がついた。


「2人とももしかしてずっと起きてた?」


 さっき日の出があったばかりだ。

 2人の生活時間を知っている訳ではないが普段からこんな時間から起きているなんてことは無いだろう。

 そう聞いた俺にアリミナが答える。


「そうなのだわ。クロウが心配でずっと起きてたのだわ。━━━━ふわぁぁ〜。クロウが帰ってきた途端にとっても眠くなってきたのだわ!」


 俺が安全だと分かって気が抜けたんだろうか。

 セレクタも眠たげに目を擦っている。


「よし!それじゃあ寝るか!!」


 さようなら生活リズム!!

 こんにちはふかふかのベッド!!




━━━━軽くシャワーを浴びて寝具に着替えた俺はすぐさまベッドに向かいそして・・・飛び込む!!


「ふふっ、すっごい跳ねたのだわ」


 真横を見るとアリミナの微笑んだ顔が。

 真っ白でもちもちとした、それでいて小さな顔の可愛らしい笑顔に俺は胸が暖かくなる。


「それじゃあ、おやすみ」


「うん、おやすみなのだわ」


・・・・・・・・


・・・・・


・・・






 目を開けると、先程までのホテルのベッドの上ではなく元の世界、地球にあるはずの自分の部屋が広がっていた。

 そして目の前には朱髪の少女、ニーナがいる。

 

「は・・・?」


「あなた、また死んだわね」


「・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

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僕と歌い手と人形少女 ただのパンダ @pandash12

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