第52話 魔王


「さて、んじゃ俺の家に行ってみるわ!」

「は?俺らも行くって!」

「いや、床に穴が空いてるからな」

「そのコンパスが指してんだろ?ならいくさ」

「そうか?何が起こるかわからないぞ?」

「それでもだよ!もう俺ら仲間だろ?」

「そうそう!1人で行くなんて無しだよ」

「…そうか、じゃあいくか」


 原付で向かうとまだ潰れていない俺の住んでたアパート。


 さてと。やっぱ中に針が向いてるな。

ベランダから入って穴のとこまで来るとやはり中を指している。

「くぅ。やっぱり行くしかないか!」

「だね!」

「見てこようか?」

 とツキが言うが、まぁ、危ないので一緒に行くさ。


「一緒に行こうか!」

「うん!」

 と穴の中に入って行く、落ちて行くのが本当だが、着地したので周りを見ると真っ暗だな。


「おーい降りていいか?」

「大丈夫だ!」

「おし!降りるぞ!」

 と降りてくるアキラを待つ間に直感でスイッチのようなものがあるので押すと中が明るくなった。

「っと!ん?なんだこれ?」

 アキラが降りるなら周りを見て声をこぼす。

「私も降りるよ!」

「おう!」

 あかりのついた部屋?には台座が一つあり、その周りは壁画のようにいろいろ書いてある。


「なんかすげえな」

「だな」

「っと!よし到着って、キモい!」

 台座を指しているので台座に乗せるが何も起きない。

 しょうがないので初めて取ったここのダンジョンコアを置くとダンジョンが蠢いて扉が出てくる。


「はぁ、びっくりさせるなよな」

「だな!」

「ちびるかと思った」


 扉があれば進むしかないからな。

 大きな扉を開く、ゴゴゴゴゴゴと音が響く。


 扉を開けると中にはドラゴンがいた。

「で、デケェ!」

「今までで一番だな」

『はぁ、なんじゃお前らは?』

 と喋るドラゴン。

「お、喋れるんだな」

『あぁ、ワシは黄竜じゃ』

「俺はナツ、アキトにチフユにツキだ」

 俺らを眺め、

『そうか、ワシが封印されてどれくらいだろうか?長いこと待った甲斐があったノゥ』


「は?」


『お主らを食ってようやく外に出れるぞ』

「ふ、ふざけるなよ?そんなことにはならねぇ!」

「お前はなんなんだよ?」


「ワシは魔王じゃ!!」



「グアッ!」

 アキラが吹き飛ばされる。

「クククッ!それだけか?もっと攻撃してこい!」

 俺は黄竜の下で精神統一をして、

「クフゥゥ…竜剣撃!!」

「グアァァアァ!」

「二連!三連!」

「ヌゥ!ぐっ!小癪な!」

 俺は無我夢中で剣を振るう!

 こんなところで食われてたまるかよ!!


「グアァァアァ!う、お、お前から食ってやる!」

「おらぁ!二重連撃」

 アキラの攻撃が当たる。

「ゴハッ!」

「ナツだけじゃねえんだよ!うおりゃぁぁぁ!」

 アキラが上から攻撃している。

「グアァァ!く、くそ!こいつだけでも!」

 とチフユに食らいつこうとする。

「キャアァァァァ!」

「火焔撃」

 間一髪でツキが間に合う。

「グフっ!」

「大丈夫?チフユ!」

「ツキちゃん!くっ、くっそぉ!3連突き」

 チフユにアキラ、ツキも頑張っている。


「54連!55連!」

 もう動きたくないほど竜剣撃を繰り返している。


「ま、負けるわけにはいかんのだ!グゥ!クソッ!どうやっても我に勝つつもりかぁ!」

「あったりまえだ!二重連撃!」

「わかりきったことを!3連突き!」

「ここで終わりにするんだ!火焔!」

 3人が上で頑張っている!俺も力尽きるまで!

『グオオォォォ!!我は負けん!ウガァァァァ!!』

 爪で顎で身体で攻撃をしてきて3人を吹き飛ばす。

「ウグッ!」

「キャアァァァァ!」

「うわぁ!」

 だが俺は止まらない、止まれない!

「グアァァアァ!こ、こいつだけなぜ止まらない!」

「…99連、これでとどめだ100連撃!!」

「なっ!馬鹿な…」

『100連達成!皇龍撃に変化します』

 よし!

「しゃあ!!皇龍撃!!!」

「ヌァァァァ…」


 魔王は消滅して行った。

 ドロップは魔王の腕輪。

 収納に入れて、俺は意識を手放した。


「っつ!」

「起きたか?」

 アキラは壁を背にして座っている。

「魔王は?」

「消滅させたじゃねえかよ!」

 そうだったな。

「はぁ、チフユとツキは疲れて寝てる」

「そうか、アキラも」

「俺は大丈夫だ」

「ん!バカ!お前!フルケア!」

 アキラの座っている床は血だらけだった。

「く、くそ!ドジったからな…」

「待て!フルケア!なんでだよ!」

 回復魔法でも血が止まらない。

「俺はここまでだから」

「待てよ!待てって!」


「旅…楽しかったな」


「やめろよ!待ってくれよ!」


「待って!僕が!」

「ツキ?」

 ツキがこちらにきて笑いかける。

「みんなで旅は楽しかったね!僕がいなくなっても忘れないで」

 ツキは光の塊になってアキラの中に入って行く。

「ツキ!ふ、ふざけるなよ!誰がかけてもダメなんだよ!順番が違うだろ!俺が先に死ぬんだ!」

 俺には何もできない。

「ナツ…ツキは俺の中で生きてる」

「あ、アキラ!俺は」

「見てみろよ、俺は竜人になったみたいだぜ?」

 涙をこぼしながら言う。

「アキラ!ツキ!俺がもう少し強ければ!」

「そう悲観するなよ!俺とツキは一心同体だ」

 と言って立ち上がる。

「火焔撃!」

 と言って扉を壊すと、

「な、なによ!ツキちゃんは?」

 轟音でチフユが起きる。

「俺と一緒になった!」

「え、なんで?」

「俺の傷は魔王のつけた傷で死にかけてたからな、ツキが一緒になってくれた」

 

「や、やだよ!アキラ!ツキちゃん!」

 ツキがいないことにチフユは涙を流す。

「俺が一生背負うものだ」

「アキラ…」


「「ほら、ふたりとも!いくぞ」」


「ツキちゃん…うん」

「分かった…俺も背負うぞ」

「あぁ、先頭はナツな!」

「わかったよ」

 そして外に出る。



 そして三ヶ月が経った。

「いい天気だな」

「だな!」

「飛ばせぇー」

 俺たちはまた旅に出た。今は広島あたりか。

「ダンジョンを見つけた!」

「よぉし!いこうか!」

「ふんふふーん」

 原付を収納して、ダンジョンに入って行く。


「楽勝だったな!」

「な!さすがにレベル100超えると余裕だな」

「私はまだなんですけど!」

「ククっ!まだだってさー」

「あ、ばかにすんな!」


 俺たちの旅はまだまだ続く、


「今日の寝床探さないとな」

「あっちに行こうよ!」

「おっジム発見!」

「よし!行くぞ!」

「ひっさしぶりのシャワーだ!」


 ダンジョンがある限りな。

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ダンジョン原付旅 あに @sanzo

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