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 幽霊って、なんだと思いますか。


 人の霊魂が、形を得たものでしょうか。

 それとも人を真似ている、別の何かでしょうか。

 はたまた所詮、人の認識下での現象に過ぎないのでしょうか。




 たぶん、どれでもないんです。

 どんなものでもないんです。


 生きているわけでも、死んでいるわけでもない。

 命と、命でないものの間。

 もっと中途半端で、もっと原始的な「なにか」。

「なにか」にすら、なれていない■■■■不明■。

「なにか」を願う者がいないと、存在できない■■■■不明■。

 人間からすれば、なにもないのと同じ。

 なにもないけど■■■■■不明■■るから、変なことが起きただけ。

 ただ起きたことが事実として、現実にあるだけ。

 それだけなんです。


 でも、人間ってそれに耐えられないんですよ。

 どんなものでも、絶対に■■■■雑音■■だって。

 自分が理解できる、説明できるものがあるはずだって。

 思っちゃうんですね。

 それがダメなんです。

 分かろうとしちゃうから。

 どうせ■■■■雑音■くせに。

 分かろうとしちゃうから。




 結局あの山には、なぁんにもなかったんです。

 少なくとも、私が理解できるものなんて。

 ただ形を求めた■■■■不明■があって。

 そこに、形を思い浮かべた人がやってきて。

 それに反応して「ソレ」になった。

 いくつもの意識が共通の「形」を思い浮かべ。

 ウロだったものに、カタを与えてしまった。

 そして歪んだ形を得た■■■■不明■は、ただ仲間を増やそうとした。

 善意でも悪意でもない、もっと純粋な感情です。


 それが命の形として正しいかどうかなんて、■■■■不明■には分かんないんです。純粋すぎて、分かんないんです。それに……どのような存在であれ、命が仲間を増やそうとするのに理由なんてないでしょう?






 ──火のない所に煙は立たぬ。


 そうはいっても。

 火もないのに煙を立たすような輩はどこにでも、いくらでもいます。




 でも、覚えておいてください。











 その「煙」を心待ちにしている存在も、必ずどこかに居ます。


 その存在たちは、静かに増殖していくんです。

 こっちから敢えて覗き見なければ、掘り起こさなければ。

 決して分からないような、昏く湿ったところで。

 ゆっくり、ぐじゅぐじゅとかびのように。

 そして同じように煙を立たせ、煙に群がる人のもとへ向かうんです。

 仲間を求めて餌を求めて、ただ吸い寄せられるんです。






 それって、どんな人のことだと思いますか。




 奇妙な事実を目にした時に。


「きっとこうだ」と煙を立てて。


「そうだそうだ」と騒ぎを立てて。


 そんな人間たちと。


 彼らが辿る末路を。


「一体、どんな目に会うのだろうか」と。


「もっと、怖いことが起きないだろうか」と。


 自分だけは、どこか遠い場所にいて。


 自分だけは、安全だと思い込んでいて。
















 それを眺めて、楽しんでいるような。











 あなたも、そう思ったんでしょう?


 何もないと思っていれば、何もなかったのに。


 怖いことなんて、起きない方がいいのに。











 幽霊って、なんだと思いますか。




 怖い話は、好きですか。


 どんな怖い話が、好きですか。
















 それは、なぜですか。

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虚形 双町マチノスケ @machi52310

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