眠らない喫茶店のウインナーコーヒー

”眠らない街”と言われる新宿。ここには、”眠らない喫茶店”がある。

新宿にある、「珈琲貴族エジンバラ」は24時間営業の喫茶店である。

どうにも課題の進みが悪いテスト週間直前の私は終電間際、パソコンを持ってエジンバラに足を運んだ。寝ずに課題を行う行為は、人によっては効率にも健康にも良くないと思うだろう。私もそうは思うが、今は多少無理をしてでも期限内に課題を終わらせなければならなかった。

エレベーターの扉が開くと、店内は落ち着いたジャズミュージックがかかっている。数人で来た客たちの喋り声は聞こえるものの、殆どの客が一人で足を運び個々の作業を行っているからか、比較的店内は静かである。洒落た制服を着た店員が案内してくれた座席は、煙草も吸うことが出来る席だった。煙草を持ってこなかった自分を少しばかり責め、渡されたメニュー表を開く。

がっつりとした料理のメニューはないが、軽食はケーキやサンドイッチがあるようだった。また、珈琲はサイフォン式のものを提供しているらしく、珈琲豆にもこだわっているようだ。夕食を食べた後だったため、ウインナーコーヒーを注文する。

コンセントもWi-Fiも備わったこの喫茶店は作業には快適な場所だった。終電時間が過ぎるとカップルや友人同士と思しき人々は帰っていき、一人で夜通し作業をする者が殆どになる。ノートパソコンを開く者や文庫本に熱中している者、タブレットを使ってイラストを描いているであろう者など様々である。服装もスーツやラフなジャージ、着飾っている人々など様々であり、一人一人の今日一日の生活が気になった。

運ばれてきた細長い円柱型のグラスに注がれたアイスウインナーコーヒーは、クリームがグラスの口ギリギリまで絞られており、スプーンで掬うと少し固めなクリームだった。甘ったるくなく、珈琲に合う程よい甘さである。珈琲はほろ苦く、クリームと別でもらったミルクを少し付け足すことで甘みが増す。クリームは固いからか珈琲に混ぜても少し塊が残り、その塊も丁寧にストローで啜って飲んだ。

夜は更けていく。キーボードを打ち込み頭を回転させながら、時折ストローでほろ苦く甘いカフェインを摂りこむ。グラスに並々と注がれたウインナーコーヒーは、作業をしながら飲んでいると飲み切るまでに意外と時間を要する。グラスのまわりは結露が現れ、手でグラスを持つ度に冷ややかさが指を伝って伝わり、怠けかけた指を現実に引き戻す。

電車やバスがないからか、深夜に新規で店に入る客は少ない。そして、店を後にする客も少ない。


朝が来れば、深夜に作業をしていた者たちが少し眠そうに始発に合わせて店を出て行く。入れ替わりで、朝型であろう人々がモーニングを食べに訪れる。追加で頼んだアイスコーヒーを飲み干し、私も眠気眼で朝日を浴びながら朝8時に店を後にした。

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料理を綴る。 ぅる @u_urei

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