コメダのモーニング

 私は時間に追われている。


 などと一丁前なことを嘆いているが、実際本当に一日が24時間では足りないと思うほどに時間がない。昼間に仕事をし、夕方から夜にかけて学校に行き(私は夜間の学校に通っている)、学校が終わったら朝まで仕事をする。毎日この全てをこなしているわけではないが、昼か夜どちらかは絶対に仕事をしている。そして合間にキーボードを打ちながら課題やこのような執筆、所属している団体の打ち合わせや作業をしている。所属団体ではなぜだかまとめたり企画を立案したりする肩書をいただいたため、様々な作業や打ち合わせが日々生じる。器用だと言われるこのスケジュールを毎日こなす中で、今日は珍しくオール明けである。

 時刻は朝10時。今日も夜から仕事だが、昼間は溜まった課題や勉強、進めなければならない作業に追われているため、朝から動くことにした。しかし、私は家だと全くと言っていいほど作業ができない人間である。環境が悪いのか気がそれ、集中力が消え去ってしまう。今日は睡眠をとらなくても平気だろう、夕方出勤前に数時間仮眠をとろうと決め、家での作業は諦め朝からモーニングというものをしにコメダ珈琲に来ている。この「モーニング」は朝を指す方ではなく、「モーニングメニュー」だ。コメダ珈琲は朝の11時まで、珈琲を頼むとパンがついてくる。しかも、そのパンには料金がかからない、つまり通常の珈琲の値段でパンも楽しめるのだ。

 私はコメダ珈琲のモーニングを頼んだことがない。どころか、基本夜型人間であり朝が弱い人間のため、モーニングというお洒落な時間を嗜んだことが殆どない。オール明けの朝知らずな人間がモーニングを頼むという滑稽な図が、都内某所のコメダ珈琲でおこなわれようとしている。

 パンは2種類選べるらしい。山形食パンを縦半分に切ったような形状の山食パンのトーストと、丸型のローブパン。そしてそこにバターかジャムかどちらを塗るか選べ、更に小皿にゆで卵か卵ペーストか、おぐらあんかを選んでつけることが出来る。家であまり食べないものを食べたくなってしまう性格なので、ローブパンを選択した。そして、バターと卵ペースト。飲み物は、いつもいく度に頼んでしまうアイスウインナー。


 飲み物と同時に小さなバスケットに入って届いたローブパンは真ん中で切り目が入っており、そこに溶けたバターが塗りこまれている。バスケットの中、小皿にはこんもり盛られた卵ペースト。

 パンを掴むと焼きたての熱とふわふわさ。ちぎって一口食べると、口いっぱいにバターの甘しょっぱい風味が広がり、小麦を感じるパンと混ざり合って喉の奥に消えていく。バターがついていない隅の部分は、控えめな量のたまごペーストをつけて食べてみる。コメダ珈琲の常設メニュー、たまごサンドと同じ卵ペーストを使っているであろう。しかし、パンの形状や食感が変わるだけで、全く味や風味、食べているものすら違うような気がするのは不思議である。拳サイズのローブパンは数回ちぎって食べたらなくなった。優雅な朝というものはあっという間である。

 そのあと、200円払えば追加でお代わり出来ることを知り、モーニングの終わり掛けにもう一つ頼んで食べた。やはりおいしい。おかげで溜まっていた作業が一つ終わり、重い荷が確かに降りるのを感じた。美味しい珈琲と優雅な朝活モーニングは偉大である。

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