第3話 同期、それは戦友となる永遠の友(予定)

「初めまして...狩矢さんであってますか?」


「あってるよー、数少ない同期なんだしタメ口でいいよ」


「...そうだね!よろしく!」


「よろー」


「よ、よろー?」


今日は同期と初めて会う日。これから長い付き合いになるのだから第一印象を良くしなければと久しぶりに美容院に行ってみたりした。集合場所はカラオケである。我々のようなコミュ障が部屋を間違えたりしたらとんでもない事になるので現在はカラオケ前で待機中だ。ちなみにLINEは既に交換済みである。しかし、直接交換した訳ではなくマネージャーさんにQRコードを送っていただいた感じだ。

今話してるこの地声が萌え声な可愛すぎる少女は、同期としてデビューする予定の『宇治原うじはらみつみ』ちゃんだ。身長は俺と比べてだいぶ低めな可愛らしいロr...女の子だ。


「あと来てないのは神楽ちゃんだっけ?」


「そうだな、」


『ぶいりんぐ』からデビューする新人は『狩矢有かりやゆう』、『宇治原うじはらみつみ』、『千国神楽せんごくかぐら』の3名である。公式からは真面目な狩人と茶道家の幼女、そして戦国系娘と明言されている。


...みんな個性強くない?俺浮いてない?

まあ『ぶいりんぐ』には人魚や天使もいるので妥当と言えば妥当である。

そんなことを考えていると少し遠くから走ってくる人影が見えた。こちら側に近づいているようだ。




...あれじゃね?






「神楽ちゃん、もうすぐで着くみたい」





あれだな(確信)


スタイルのいい女性はこちら側に近づいや否少し気まずそうにしてスマホを取り出した。すると『ぶいりんぐ 3期生』のグループに「到着したのじゃ!」というメッセージが送られてきた。



あれじゃん(完全理解パーフェクトアンダースタンド)



俺はちょいちょいと彼女に手招きをするとそれを見て不安気に近づいてきた。


「狩矢です。千国さんですよね?」


「何故わかったのじゃ...さては忍びの者か?」


「ロールじゃ無かったんだ、あれ」


完全にチャットと同じ感じだ。そんなやり取りを見てみつみちゃんは軽く笑い

「じゃあ、入りましょうか!」とカラオケ店のドアを開けた。


ぶいりんぐ3期生初集合である。






しばらくの間、狭いカラオケ空間に沈黙が流れる。そりゃそうか、LINEで話した感じみつみちゃんは人見知りだし神楽ちゃんは今までの行動を鑑みるに多分ネット弁慶だ。

仕方がない。何とか俺が話を進めるしか無さそうだ。



「ということで、俺は狩矢有。狩人をしておりました。今は大学1年生、好きな物はネット、以上。そして通常衣装がこれ」


そう言ってスマホを机の上に置く。画面には白と紫を基調としたコートとパーカーのハイブリッドみたいな服を着た茶髪の好青年が写る。俺だ。服とかよく分からんが、とにかくかっこいい。

すると千国さんが真っ先に声を上げた。


「は?美形だな?!」


「せやろ」


「かっこいい...」


「せやろ」


千国さんロープレ外れてない...?と思ったがそれは置いとこう。とりあえず俺のかっこよさを自慢できたので満足だ。すると千国さんがカバンから何やらファイルを取り出した。


「あたくしはこんな感じなのじゃ!」


ドヤ顔で机に並べたのは赤みがかった黒髪が特徴的な着物の少女の正面のイラストや三面図...がプリントされたA4の用紙である。わざわざ印刷したのかこれ



「とてもお美しいです!」


「俺に負けず劣らず美形だな」


「そうなのじゃ!初配信が楽しみで仕方がないとじゃ!」


「あっ...私も紹介していい?」


「もちろんなのじゃ!」


オドオドしながらみつミちゃんもスマホを操作して画像を見せる。そこには緑色の髪に双葉のようなアホ毛が特徴的なロ...幼女がうつっていた。


「超解釈一致なのじゃがア゙ア゙ア゙ア゙ア゙(浄化される音)!!かわよすですぎてくぁwせdrftgyふじこlpッッッ」


「実際にくせあふじこ口に出す人居るんだ...。それはそうとしてマジでこれは可愛いな...」


「えへへ...」


そんな会話を重ねて俺たちはカラオケでの時間を過ごした。正直今まであまりVTuberについて語れる人に、会えなかったのでヲタトークに花が咲いた。途中ムイここかここムイかでの戦争が起きたが、みつみちゃんの歌が死ぬほど可愛かったので一時休戦とした。萌え声最高。そして、しばらく時間が経った頃


「...ところでさ、みんなは初配信って何するの?」


みつみちゃんが俺がずっと聞きたいことを聞いてくれた。


「あたくしは歌を披露する予定なのじゃ!」


「神楽ちゃんすごーい!何歌うの?」


「君が代にする予定じゃ」


「...ど、独創的だね」


「お主はわかるやつのよう!」


「神楽ー多分それ褒め言葉ちがう、みつみちゃんは?」


「みつみはね、お茶について解説する予定!」


「キャラにあっててとてもいいと思うのじゃ!狩矢は?」


「それなんだけどさ...親フラしようかなって」


「ほう、親さんの許可は取れてるのか?」


「母親が無神ムイだから」


「...は?」

「...え?」



だよな、こういう反応だよな。とりあえず神楽は煽っとくか。

「ムイここの子供が俺ってワケ」


「貴様...?!」


「...なるほど?みつみは理解したよ」


「おお、理解がはy」

「有君は推しカプの子供になりたいんだよね?」


「ちがう、そうじゃない」



ーーーー説明すること数十分

「...ということで親フラ風のことをして注目を集めようかと」


「漫画みてぇな展開でワロスなのじゃ」


「確かに注目はされるだろうねぇ...」


「ということで、同期のみんなにはある程度迷惑がかかるかもしれないけど...許してくださいますかね?」


「問題ないのじゃ!おもろければモーマンタイなのじゃ!」


「みつみも応援するよ!」


「ただ一つ思うことがあるのじゃが...」


「おう、なんだ?」


「初期から親にバレているの辛くないのか...じゃ?」


取ってつけたような“じゃ”で誠に草である。


「...神楽、無神ムイの配信見たことある?」


「ASMR配信がめっちゃスケベじゃな」


「それ乗り越えたからもう無敵だよねって話」


「お、おう...ならいいのじゃが」


「それに俺は元から何も隠してない。オタク趣味もバレているし、なんなら好みのキャラ把握されてる。買った同人誌さえ把握されている」


「地獄かな?」

「哀れなのじゃ」


...と、何やかんやで話したいことも話し終えたので解散することにした。








初配信まであとわずか

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