第2話 台本、それはドラマを創るもの
「あーーーー台本どうしようかなーー!!」
現在、日曜日の14時半。俺はリビングにてノートに向かい、格闘していた。しかし勉強をしている訳では無い。これは初配信の台本ノートだからだ。
「そんなに思い悩むな、あういうのは無くても何とかなるもんだ」
テレビを見ていた父が隣に来て肩をポンと叩く。
「そういえば姫園先輩は直前に台本入れてたスマホが壊れてワタワタしながらなアドリブでやってましたもんね」
「やめなさい」
「それからドジっ子キャラが定着して」
「やめなさい」
どうやら触れてほしくないところらしい。ふふ...いいネタを見つけたぜ。
「ふむふむ...ちゃんと書けてるじゃないか。設定も分かりやすく書けてていいと思うぞ」
「違うんだよ...ここからどこにアレを入れるかが問題なんだよ...」
「あぁ...アレか...」
そう、それは“親子発表”、である...。最初に言ってしまうとそれ以降の話が入ってこなくなる可能性がある...だからといって“○○日後に発表!”みたいなやつはなんか嫌なんだよな...(個人の意見です)
「あと“ムイここ”が公式𝖢𝖯だと固定されてしまうのがとても申し訳ない」
「...えっそこ?というか元から言ってるし問題ないだろ」
「いや、ネタとして捉えた層もいると思うし“ムイここの子供”っていう徹底的な証拠が出てしまうのは人によっては脳破壊に近い行為だから!確かに俺は“ムイここ”が一番好きだけど、それとは別に他の𝖢𝖯の可能性を潰してしまうのはなんか違うと思うんだよね。やっぱりVTuberに限らず二次創作というのは可能性が無限大だからこそいいのであって」
「急に早口になるじゃん怖...」
というか、俺が親子なんです発言をしただけだと推しカプの子供に産まれたい性癖の人、としか思われない可能性が高い。VTuberというのはそういうのが有り得る世界だから、誤解されないように伝えるのが難しい。
「おつムイ〜」
実の息子が悩んでる中ふわふわとした癒しボイスがリビングに響き渡る。俺のお母さんこと無神ムイ先輩は12時から定期的に雑談配信をしている。休日の昼からの配信は多く人が癒され、明日から仕事である現実を突きつけられることだろう。サ●エさんみたいな役割である。しかも、最後にはジャンケンもある。完全一致だ。
「あら〜台本作業?頑張ってね〜コーヒーいれてあげようか?」
「...じゃあお言葉に甘えようかな」
了解〜と言いながら自分のコップを片手にキッチンへと向かっていく。...本当に配信の姿まんまだな、自然体で活動できているのは1リスナーとして非常に喜ばしいことだ。
「とりあえず、今できてる分だけでも通して確認したらどうだ?」
「確かに...そうしようかな」
うんうん、と頷いて父親はソファーへ戻って行った。
「...お初にお目にかかります。俺の名前は
ボソボソと台本に書かれた文字を読んでいく、自己紹介から軽い雑談へ、そしてコメントに反応するという流れだ。
「元は狩人やってたんだけどネットにハマっちゃってさー、自分も何かしてみたいなって」
文章が硬過ぎるか?まぁ、本番は言い方を変えてみるか、
「嫌いな食べ物はほとんど無いよ〜好きな食べ物h」
「はい、コーヒー入れれたわよ〜」
「...」
「...あら?邪魔しちゃった?」
「それだ!!!」
「へ?」
「親フラだぁーーー!!!」
方向性が決まった。親フラっぽく登場してもえば放送事故に見えて注目が集まるし本当に親子であることがわかりやすい。
「お母さん...いや、無神先輩!俺の初配信に親フラ風に出てください!」
「いいわよ〜」
「うっしゃ!」
台本はこれで完璧だ...いや、本番で完成させる、即興力が試されるだろうが問題ない。俺は自分の力を信じるだけ...。
「...あーーーコーヒーうめぇーーー!!!」
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