第10話
第10話
大勢の光の粒が宇宙空間を旅している。さながら生きる砂漠のように、波打つ水面のように、ゆらりゆらりと舞い踊る。好奇心旺盛な光の粒は、ときに興味を惹かれた星に舞い降りることを選ぶ。光の粒は星で生き物と交流を深め、情報を蓄積していき、ふたたび宇宙に舞い上がり、仲間と広く情報を共有する。そうした営みを繰り返していたある日、光の粒は星とは別に興味深いものを見つけた。
知的生命体による巨大な建造物。宇宙を漂うそれは星船と呼ばれていた。光の粒は直ぐにコンタクトを開始する。光の粒は星船の中に入れなかったので、星船の外壁工事をしていた知的生命体とコンタクトをとった。その知的生命体の名は、ジュニジェインといった。
光の粒はジュニジェインの頭の中を観察する。ジュニジェインの頭の中には様々な知識が詰め込まれていた。光の粒は知識欲を刺激され、ジュニジェインのルーツと呼ばれる地球に関心を持った。さっそく、光の粒は末端を地球に伸ばし、そこで暮らしている仲間とコンタクトをとる。
地球で暮らす光の粒は幸せそうにしていた。人魚と呼ばれる知的生命体と共生関係を築き、歌と呼ばれるコミュニケーションツールで会話をしていた。特に、歌の技量が高く、光の粒と親和性の高かった者がいた。その者はラムネといった。ラムネは光の粒を友とし、光の粒もまたラムネを友と認めていた。
宇宙空間の光の粒は、地球の光の粒が羨ましくなった。知的生命体と友になるまで深く関わったことがなかったからだ。同時に、地球の光の粒は、宇宙空間の光の粒が羨ましくなった。自分の知らない大勢の知的生命体と知り合いになっていたからだ。両者は互いの情報を求め、コンタクトを開始する。
ジブラルタルの上空で台風のように大きな水しぶきが上がり、星船近くの宙域では宇宙嵐が発生する。どちらも光の粒が引き起こした現象だ。
水しぶきと宇宙嵐はラグランジュポイントで繋がり、一本の線になる。両側から光の砂が伸びる砂時計のような光景。光の粒たちはラムネとジュニジェインの2人の知的生命体を巻き込んで情報交換を開始する。結果、2人の意識の情報は混線した。
星の砂から星の海まで
序章・完
星の砂から星の海まで 黒水 @kuromizu9632
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