第9話

第9話


 ジュニジェインとワタアメは食堂に戻った。

 マカロンが2人を出迎える。


「おっ。戻ったっすね。仲直りできてなにより……仲直りしたっすよね?」


 マカロンは2人の間の雰囲気が変わったことを感じ取る。食堂を出る前に比べてジュニジェインは明るさのようなものが増し、ワタアメはジュニジェインに対する態度が少しよそよそしくなっているのだ。


「心配かけて悪かったね。おかげで誤解を解くことができたよ」


「それはなによりっす」


「誤解というのは僕がラムネだという誤解だ」


「え! ラムネさんじゃないんすか!?」


「僕の名前はジュニジェインだよ。改めてよろしくね」


「ちょっと! そんなすんなり言うの!?」


 ワタアメがジュニジェインの腕を引っ張って言った。


「マカロンさんとの誤解も早めに解いたほうがいいだろう?」


「それはそうだけど! 私だから打ち明けてくれたわけじゃないの!?」


「これからはオープンにしていくつもりだ。そのほうが楽だからね」


「……あっそ!」


 ワタアメはそっぽを向いてしまう。


「打ち明けたきっかけは君だからだよ」


「知らないわ」


「はー。ラムネさんにそっくりっすね」


 マカロンはジュニジェインを見つめると、思いついたようにこう言った。


「じゃあ、さん付けじゃなくてジュニジェインって呼んでもいいっすか?」


「別にいいとも」


「ちょっと……! マカロンさん? なにを言っているのかしら?」


 ワタアメが腕を組んでにらみつけるが、マカロンはきょとんとする。


「え? だってラムネさんじゃないんすよね? ならボクが遠慮する理由は何も無いっす。あ、ジュニジェインはボクのこと呼び捨てでいいっすよ」


「ならマカロン。今後ともよろしくお願いするよ」


「あぁもう! ラムネじゃないけど……! ラムネの顔で他の子と仲良くされるとモヤモヤするのよ!」


「そっすか。あ、ジュニジェインは明日、予定あるっすか? 後回しにしていた技術屋をボクと一緒に見に行かないっすか?」


「いいね。ワタアメも一緒に行かないか?」


「ぐぅ! そうだった! こういうやつだったっす!」


 マカロンは頭を抱える。

 ワタアメは片手で顔を覆い、ため息をつく。


「え?」


 ジュニジェインはきょとんとする。


「ジュニジェイン、お誘いありがとう。えぇ、私も行かせてもらいますとも。2人だけにしておきたくないからね」


 そうして、激動の一日は終わる。

 ジュニジェインはラムネの家を借りることになり、そこで夜を過ごす。


 その夜、ジュニジェインは夢の中でラムネと出会うことになる。


※※※※※


 ラムネとバルバロの2人が食料品を売っていると、警報が鳴り響いた。


「えっえっ。わたし、また何かやらかしちゃいました!?」


「いや、きっと違う」


 バルバロは壁のスピーカーに耳を傾ける。


「宇宙嵐。宇宙嵐に遭遇しました。船員は皆、衝撃に備えてください」


 スピーカーからのアナウンスに、星船全体に緊張が走った。


「ラムネ、壁にあるベルトで自分を固定するんだ」


「えっ。でも、営業時間中ですよ」


「いいから早く!」


「ひゃい!」


 バルバロの怒鳴り声を受け、ラムネは慌てて自分を固定する。

 バルバロもまたベルトで自身を固定し、これから起こる事態に備える。


 数十秒後、星船全体が地震のような揺れに襲われた。陳列した商品は宙を舞い、壁のライトが点滅する。

 やがて、揺れはゆっくりと静まり、壁のライトは復旧した。


「今、なにが起きたんですか?」



「宇宙嵐だ。ここら辺の宙域には謎の光の帯があってよ。それに星船が触れると一時的なシステム障害が起きるんだ」


「謎の光の帯、ですか。魔力みたいですね」


「魔力ってあれか? ジブラルタル特有のやつなんだろう? ここら辺にあるわけねぇよ」


「そう、ですね。魔力があるわけないですよね」


 その後の2人は宇宙嵐で散った商品を片付けると、奉仕活動を再開した。一日の終わりを告げるアナウンスが鳴ると、居住区の三等級ルームに移動する。軽く試験勉強をした後、ベッドに入り、眠りについた。


 その夜、ラムネは夢の中でジュニジェインと出会うことになる。

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