第十八話
話し合いの結果、探索組と残って時計の謎を解明する組に分かれることとなった。
探索組は俺、そして鈴香。そして解明組は小夜、そして翔太だ。
翔太は最後まで「俺も探索する!」とごねていて、説得するのにだいぶ時間がかかったが、無事説得することができた。
俺達の仕事はこの病院の謎を解明することだ。正直翔太に難しい話は酷だし、例え覚悟があったとしても実力が伴わないんじゃ意味がない。
……それなら残ってもらったほうが楽だ。
それに有事の際、二人だと都合がいい。俺達はもう自分の判断に責任が取れる年齢だ。このゲームも自分の意思で参加することを決めた。
でも翔太はちがう。本来翔太はまだ守られる存在なのだ。子どもの権利条約に、基本的人権だってある。そんなのが家庭の事情だからといって、ぞんざいに扱われていいわけがない。
そもそも子どもを持つというのは、親のエゴであり、快楽の代償なのだ。産むと決めたのなら、そこに責任を持つべきなのだ。一人の人間として。
とにかく翔太には危険な目にあってほしくないのだ。自分の幼い頃に似ているから余計に。
もしかしたらこれは、俺のエゴなのかもしれないし、ただ翔太に過去の俺を投影しているだけかもしれない。
それくらい、なのだ。
子どもは危険な思いするべきじゃない。
「それで、まずはどうするの?」
鈴香が俺に問いかける。
解明班は既に時計をバラしている途中だ。翔太と立は、いつ何時敵が現れてもいいように身構えてる。張り詰めた緊張がそこには流れていた。
俺達は邪魔にならないようにゆっくりと扉を開け、外に出た。まずは地下一階の探索だ。
午前八時を示すレーダーの反応。それを頼りに俺達は、慎重に階段を降りていく。無駄な戦闘は時間無駄なため、極力避けたい。
手に持っている武器はスタンガンのみ。正直これだけじゃ心許ないため、できれば武器も調達したい所。
割れたガラスに木の枝、危険そうなところも極力避けながら歩く。これらは正直武器になる気がしないためスルー。できれば短刀とかナイフがほしい。いや、そんなもの廃病院に置いてるわけない……か。
「まず、なにを確認する?」
「そうだな……。まずは病院ならあるはずの診察室に手術室かな……。」
まずはそこにあるべきものを確認したい。
まずどこにあるかの把握が優先順位は先だが。
人体実験の凶悪さは歴史が物語っている。第一次世界大戦時代の実験にしかり、一週間持たなかったことで有名な、スタンフォードの監獄実験にしかり。
時計の形をした心臓 茉莉花 @maturika821
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