第4話
ノックして入ってきたのはいかにも怪しそうな女だった。目つきは鋭く、心の中は読み取れず小賢しそうに見える。連続殺人事件の容疑者の一人であるということで、気を引き締めて臨む。
「席について。」とうながして見たものの、もう疲れ切っていた。とりあえず取り調べを始めた。
「私は武田茜。無職だ。45才。ここに来たのはここ最近で7、8回目だぞ。」
高飛車な口調で女は口を開いた。
「被害者との関係は?」
「特に知らない。全くの他人だ。話せることは無いから、もう帰らせてほしい。」
「まあまあ。もうすぐ終わりますから。ところで、なぜこのホテルにきていたんですか?」
「気分転換に来ただけだ。この前から取り調べばかりでうんざりしていたんだ。」
気分転換にホテル?そんなことがあり得るのだろうか。
「気分転換、というのは?」
「そのままだ。毎日一日中家にいるのは疲れた。」
そんなこともあるのだろうか。
「ところで昨日の23時30分ごろエレベーターホールにいたそうですが何をしていたんですか?あなたの部屋は8階ですよね。」
「降りる階を間違えた、それだけのことだ。604号室の友人の部屋に行こうとしたら誤って7階に降りてしまったんだ。最初は気づかずに704号室に行ってしまいそこで間違えに気がついた。」
「その後1階のロビーに行っていましたよね。」
「私はボストンバックを持っていただろう。そこに洗濯物を入れてランドリーに預けていた。」
「あなたが持っていたボストンバッグは2つで、ランドリーに預けたのはうち1つだけですよね。あなたはロビーによったあと、ホテルから出た。そのときは何をしていたんですか?」
「なんでもいいだろう。警察はそんな失礼なことまで聞くのか。」
「一応の確認ですから。」
「言えない。」
「もしかして人を入れていた…とか。」
「そんなわけないだろう!女の私は人をバッグに入れて持ち運べないに決まっているだろう!」
武田は苛立ちを隠すことなく声を荒らげた。
このあとも何度か質問をしたが、答えられることはなかった。
「なるほど、わかりました。また連絡しますので、待機室に戻ってください。」
「ああ。」
武田は奮然と退室した。
また怪しいのが来た。この前からこればっかりだ。ここまで来ると全員が犯人にまで思えてくる。でも、まだ取り調べは3分の1ほど終わっただけだ。もう4人、怪しい人物が来ると思うと、自然と舌打ちが漏れた。
彼は苦笑した @JanKoller24
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