(十六)
シュートにいた間、人いきれで疲れていたのか、連夜夢を見ていた。これまでに巡った場所を反芻するかのような夢だ。現実を忠実に再現したものもあれば、架空の設定が乱立しているものもあった。
キュックに住んでいた頃の夢も見た。私はキュック出身ではないのだが、大学進学以来ずっとキュックに住んでいた。今は根無し草だ。
夢に出たのは元職場である。かつての現実の通り、私は庶務部に属していた。夢の内容の詳細は忘れたが、寝覚めは悪かった。
私が元職場を苦手としていた理由の一つに、仲間意識が強かったというのがある。お互いがお互いを思いやり、身内として認定していた。だからこそ、そこから外れたらどんな目に遭うのだろうという恐れがずっとつきまとっていた。我々庶務部は一枚岩といっても過言ではなかった。そして身内以外にはやたらと厳しかった。一丸となって他の部署と衝突したこともある。今は優しいあの人もこの人も、所属が変われば豹変するに違いないと私はびくついていた。現に、異動していった途端、悪口を言われだした人がいた。以前はあんなに仲が良かったのに。次は私なのではないかという危惧が常にあった。
仲の良い友人がいなくとも支障はなかった。所詮職場だ。だが、積極的に冷たくされたいわけでもないのだ。私はいつかきたる仮想敵を常に警戒していた。
そういった疑念が全面に出た夢だったように思う。人は過去を完全に捨てることはできない。過去・現在・未来は地続きだ。
以前、思考を切り替える合図について考えたのを思い出す。ただし、その合図の存在を思い出すのは、ぐるぐると過去を考え切って時間を浪費した後だ。合図がまだ身体に馴染んでいない。習慣化すれば少しはましになるだろうか。
ゾネ 芳ノごとう @1234letter
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