こちらの小説の持つ「質感」、僕はそこにとても魅力を感じました。
僅か2,156文字のこちらの短編小説は、その「質感」においてその数倍以上の「力」を内包しているのだと僕は唸ってしまいました。
では、小説の「質感」とは何か?
これはとても伝えにくい事であります。例えば「質感」を語るに、野球でピッチャーが投げる球には速度や球種を越えた「重い球・軽い球」というものが存在しますし、ボクシングでもパンチ力を越えた「重いパンチ・軽いパンチ」というものが存在します。その理由を物理的に説明する事は可能ではあります。
では、小説において同じ日本語としての「重い小説・軽い小説」というと、少し語弊があります。ですので「質感」というものの表現としては、単純に「心に残る文体・残らない文体」とさせて頂きます。勿論、好みの問題もありますので、あくまで単純にです。
さて、こちらの小説で何を言わしめて「心に残る質感」があるというのか。
僕のものすごく個人的な感性で独善的に語るとするならば「触る」という感覚を随所で味合わせてもらえるものです。ますますわかりにくくてすいません(笑)。
それは、ここに意図され配列されたすべての言葉が、読み手である僕の心に独特の感覚を与えながら、読むと言うよりは「触れて」来るのです。ゆえに物語が僕をとてつもなく魅了し、気がつけば読後に「心に残るモノ」、いや、「心に来る」と言う方が正確かもしれませんが、そういう感覚を残すのです。
それは決して読みにくい訳でなく、寧ろ読み易いのにとても惹きつけられてしまう物語でもあります。
お勧め致します。
お気づきでしょうか? このレビューは敢えて「質感」だけに止めて書かせて頂きました。物語の真の魅力はさらに別の場所にあります。それはお読みなられてから、お楽しみ頂ければと思います。
皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)