こねくり回して完成したキャンプ用【食糧人工彼女】は……それなりに美味しい
楠本恵士
第1話・作った彼女を早速味見してみよう♬
その高校生くらいの年齢の少女は、裸で困惑した表情で見知らぬ男子高校生の部屋の床に、ちょこんとW字座り〈作者が勝手に命名した座り方、下から見ると足の形がW字型になっているので〉していた。
室内着のカジュアルな服装をした、男子高校生は裸で座っている同年の女の子を眺めながら。
「うん、うん」と納得した顔で、うなづいて言った。
「本当にインターネットで調べた通りの、魔法で完成したな……〝人工彼女〟」
人工彼女が恐る恐る、眼の前に立っている男子高校生に質問する。
「あのぅ、あなた誰なんですか? あたし誰なんですか? ここドコなんですか? あなた高校生みたいですけれど?」
作られた人工彼女は、壁に掛けられている男子高校生が高校入学した時に校門の前で撮影した、額縁写真を眺める。
男子高校生が落ち着いた口調で言った。
「まあ、待て待て。順を追って話すから……まず、おまえは人間じゃない」
「人間じゃないって……どういう意味ですか?」
「ぶっちゃけて言うと、おまえは〝肉まん〟だ」
「はぇ?」
「関西では〝ブタまん〟とも言うがな……おまえは、オレがコンビニで買ってきた肉まん二つと、水で耳たぶくらいの固さにした小麦粉……おっと、ベーキングパウダーも少し加えたかな……それらを呪文を唱えながら練ったら勝手に完成した」
思考が一時停止した人工彼女が、数秒後に動揺した声で口を開く。
「あ、あ、あたし……食べ物なんですか⁉」
「乳房は肉まん二つ、尻の具はアンコが詰まった〝あんまん〟だ──お腹に指を突っ込んでピッと開くと臭みを抜いて味がついた〝モツ〟が出てくるから、そのまま鍋に入れて煮込めばモツ煮の完成だ……モモ肉はフライドチキンの下味が付いているから手間いらず、舌は焼いて〝タン塩〟とか煮込んで〝タンシチュー〟とかに……あとは、脳ミソも」
「もういいです! 聞いていたら頭が変になりそう……」
「眼球は美味しいアメ玉で、皮膚は部位によってシャケの皮やトリ皮の食感も楽しめて……脂肪にはスッポン味のコラーゲンがたっぷり、背脂もラーメンに入れたりすれば濃厚な味に……」
「聞きたくないって言っているでしょう!」
人工彼女は半分泣き声で言った。
「あたしって、なんなんですか? どうして作ったんですか?」
「だから、彼女と食糧の兼用」
「言っている意味がわかりません」
「オレは
「はぁぁ?」
人工彼女は、部屋の隅に置いてあるキャンプ道具に目を向ける。
「キャンプをしている時に考えた『キャンプの時に横に彼女がいれば……食糧を運んでいくの面倒くさいから、食べ物が自分で歩いてきてくれれば』──この二つの問題を一気に解決するために、オレは食糧&彼女の人工彼女を作った。どうだ、オレって天才だろう」
プルプルと、体を小刻みに震わせる人工彼女。
「変態……あなた、変態です」
「そんな口の利き方してもいいのかなぁ、おまえはオレの命令には逆らえないように作ってあるんだから……おいっ、胸の肉まん一個よこせ」
人工彼女は片方の乳房を、ムニュと引っ張り千切って取ると。
「はい、肉まんです」
そう言って男子高校生に手渡した。
胸肉まんを渡された男子高校生は、美味そうに肉まんを食べる。
「うん、美味い! 人肌に温まっている……ちなみに夏場には、でっかい〝アイスまんじゅう〟に変わるから。春夏秋冬さまざまな食材に変化するから」
人工彼女が頬をヒクヒクさせながら、乳房が取れて平らになった自分の胸を指差して言った。
「どうするんですか……この平らな胸」
「あっ、大丈夫こうすれば元にもどるから」
そう言って、男子高校生は人工彼女のヘソの穴に浮き輪を膨らませる時に使うポンプのホースを押し込んで、シューシューと空気を入れると平らだった彼女の胸が、プクゥゥと膨らんで元の状態にもどった。
さらに頬を、ヒクッヒクッヒクッさせながら人工彼女が言った。
「なんなんですか……この体、女の子を部屋に軟禁してもいいんですか? 家族に怒られませんか?」
「ん? 怒られる? どうして? おまえは、スナック菓子や非常食のカップ麺を部屋に置いてあるのを見て、怒る家族がいると思うか」
「思いませんが……なにか納得できません」
男子高校生はクローゼットから取り出した、男物のシャツを人工彼女の方に放り投げて言った。
「とりあえず、今日のところはそれ着ていろ……キャンプに同行する時には、ちゃんとした服を買ってやるからな……ちなみに、おまえには〝賞味期限〟あるから」
「ひぇぇぇぇぇぇ!」
作った彼女を早速味見してみよう♬~おわり~
こねくり回して完成したキャンプ用【食糧人工彼女】は……それなりに美味しい 楠本恵士 @67853-_-
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