おまけのおまけ 緒珠からの手紙

【まえがき】

 初音視点②(釜石編)に登場した緒珠のタイムカプセルに納められた二通のうち、『吾郎さんの横にいる人へ』の送り状の内容になります。


 近況ノートに没ネタとして掲載していたものを、加筆修正してリファインしています。また判読不能としていた部分もここから――ここまでの注釈を入れつつ再構成しています。なお、この区間の最後で句読点がないことは仕様です。


-----まえがき ここまで-----


拝啓 吾郎さんの本命さんへ


 初めまして、鮎ケ瀬あゆがせ緒珠つぐみです。

 小佐野吾郎さんの一年後輩をやってます♡ 将来は吾郎さんと同じ職場で働いて、一緒のお家に住んでぇ、吾郎さんの子供を産み育てたいですぅ。

 だ、か、ら、吾郎さんとはとっとと別れてくださいね(⋈◍>◡<◍)ノシノシ


 ……なんてね(テヘ



 ふざけてしまってごめんなさい。


 あらためて、鮎ケ瀬緒珠です。小佐野吾郎さんの次の年次に岩手大学に入学した後輩になります。


 吾郎さんとは大学内のサークルで知りあい、それからは大変お世話になってしまいました。学業や日常生活のサポートを与えてくれた吾郎さんには、とても感謝しています。いいえ、感謝しきれません。そう思ってしまうぐらいに、色々とお世話になってしまいました。


 特に秘密にしてたあたしの持病を知られてしまってからは、自分のことも差し置いてしまう吾郎さんに、逆に甘えてしまいました。そのせいで吾郎さんは故郷釜石へ戻る暇もなくなってしまいました。吾郎さんが大好きな子あなたと過ごす時間を奪ってしまったこと、大変申し訳なく思っています。


 あまつさえ吾郎さんは、持病の進行とともに気落ちしていくあたしを懸命に支えてくれて。力の限り尽くしてくれる吾郎さんのこと、あたしは本気で好きになってしまいました。吾郎さんからは、故郷に好きな人が居ると聞いて知っているのに。


<この先、一度濡れてインクが滲んで乾いたため文字の判別が困難な箇所>


 あなたに申しわけなくて、吾郎さんのこと諦めようとしました。何度も何度もしました。でも、結局、できませんでした。


 どうしても吾郎さんを欲してしまって、身体が疼いてしまうんです。だから、吾郎さんがあなたのために残していた初めてを、あたしは奪ってしまいました。いえ、積極的に奪いにいきました。何度もキスしたし、あたしの純潔初めても吾郎さんにもらってもらいました。


 けれど、吾郎さんを心の底からの笑顔にしてあげること、あたしではできなくて。あなたには敵わないと思いし


<判別困難はここまで>


 すみません、少し涙ぐんでしまいました。


 あたしはもうすぐこの世からいなくなります。理由がなくなれば、きっとあなたの元へ吾郎さんは戻るでしょう。ただ吾郎さんを、綺麗なままでお返しできなくてごめんなさい。本当にごめんなさい。


 でも、もうお邪魔虫は消えます。だから、もしも吾郎さんと疎遠になっていたというなら、時間をかけてでももう一度仲良くしてほしい、我儘だけど願っています。


 もしあなたが良ければ、あたしの希望ゆめの分ものせて、吾郎さんと一緒に幸せになってください。さようなら。


    あなたに敵わない 鮎ケ瀬緒珠より

    20〇〇年△月◇◇日


<以下は本来余白に当たる部分への書き込み>


 死にたくない。まだ生きたい。あなたに渡したくない。いつまでもそばに居たい。もっとキスしたい。もっともっと深くつ


<この先、一度濡れてインクが滲んで乾いたため文字の判別が困難なまま終わる>


ながっていたい。もっともっともっと吾郎さんに尽くされたい。もっともっともっともっと吾郎さんを愛したい。未来永劫、片時も離れるず、二人ともに死を迎えてもずっとずっとずっ

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