転生したらコウメイでした

東木茶々丸

第1話 思ってた奴と違うッ!!


「起きろ!……起きろって!」


 男に体を揺さぶられる。


「んんっ……あと五分……」


 俺はベタな答えを返す。


 ……確か、俺は海外旅行中にボウガンを持った暴漢に撃たれたのである。

ものすごい激痛の中で、意識が薄れていったのを記憶があるが、何とか生き延びたか。


「やっぱり、変なもん食べたからですかね?」

贅沢ぜいたく品は食わせるんじゃなかったな……」


 俺が目を覚まさないと思ってか、近くにいる二人の男は言いたい放題だ。


「おうおうおうおう!好き勝手言ってくれるじゃねぇか!」


 俺は布団から跳ね起きる。

ぱっと、辺りを見回すと様子がおかしい。


 実に汚らしい……というか古めかしい。

俺はアジアに旅行に行ったわけではないのだが、どう考えても部屋は中国風だ。


 ……もしかして、レッドク〇フ的な映画のスタジオだったりする?

三国志は好きだけど、博士って程ではないし、俺はまったく芝居とか出来ないけど……。


「なんだ、何とも無さそうですね」

「まったく、計画についてコーメイに相談しようと思ったのによォ」


 ……孔明? もしかして、諸葛しょかつ孔明こうめいか!?

俺、もしかして転生しちゃってる!?


 いや~、俺が孔明かぁ~。

劉備りゅうびを支えて、風向き変えたり馬謖ばしょくを斬らないといけないのかぁ~。


「それで、事態はどうなっているのですか?劉備様」

「劉備?何を言ってるんだ?アイツなら遥か遠くの徐州だぞ」


 あー、まだ劉備に仕官する前だったか。

ここは状況を確認しよう。


「貴方たちは誰と誰ですか?」

「気持ち悪い喋り方に、ワイの名前まで忘れたか……」


 ガタイのいい男は明らかに落ち込んでいる。

もう一人の細い男が代わりに話しだす。


「私は宋果そうか[1]」

「そうか」


 いや、別にダジャレじゃない。


宋果「こちらは、楊奉ようほう[2]殿です」

「ヨーホー?ヨーホー?海賊かな?」

ヨーホー?「海賊というよりこう賊だな」


 ヨーホーと言われた男は、ようやく立ち直ったようだ。

ん、楊奉?何か名前だけ聞いたことがあるな。


楊奉「もしかして、自分の名前も忘れてるんじゃないのか?」

宋果「そんなまさか……」

「い、一応……聞いてもイイですか?」


「お前は徐晃じょこう[3]。あざな公明こうめいだ」


 こ、コウメイってそっちだったか~。


 じょ公明こうめい

一般では徐晃と呼ばれる彼は、後のの五大将軍の一人である。



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[1]宋果:後漢末期の武将。董卓とうたく残党に仕えている。

[2]楊奉:後漢末期の武将。賊上がりで董卓残党に仕えている。

[3]徐晃:後に魏に仕える武将。楊奉配下。

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転生したらコウメイでした 東木茶々丸 @inutiyo11

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