その声が、世界とつながる扉だった

耳を塞いで、私は世界から逃げていた。
音は暴力で、音楽は苦痛で、人の声さえも刃のように刺さった。
それでも私は、生きていた――ただ静かに、透明に。

そこへ現れたのは、世界一うるさくて、世界一まっすぐな少女。
自分の声に自信を持ち、笑い、歌い、叫ぶ。
そして、どんな遮音も貫く声で、私の沈黙を壊していった。

イヤーマフとヘッドホン。沈黙と音楽。拒絶と衝動。
交わるはずのなかったふたりが、少しずつ世界を重ねていく。

文化祭のゲリラライブ。片道一時間を越える音楽探訪。
ぶつかり、笑い、つながっていく声と声。
その中で見つけた『初めての本音』と、『聴かれたい』という願い。

それはきっと、世界でいちばん遠かったふたりが、
世界でいちばん繊細な音で心を結んでいく物語。

この声は、もう誰にも止められない――。
音に傷ついた少女が、音で世界を愛し直す青春の旋律、ここに開幕。