第29話 マスク越しの接吻?

 えっとぉ、私、ようやく3月から入浴介助を始めました。

 今やっているのは、機械浴になります。ストレッチャーに横になりながら、入浴ができる優れもの。寝たきりの方の入浴になります。

 ですが、歩けるけれど、職員の声掛けに応じることのできない方も、この機械浴になったりします。


 鳥丸さんは、椅子に座れるし手引き歩行もできる方なのですが、こちらの声掛けに反応いたしません……

「鳥丸さん、お風呂に行きますよ~。はーい、立ってください」

「……」

「鳥丸さん、立ちますよー」

「……」

 微動だにしない鳥丸さんを、職員二人がかりで立たせ、お風呂場まで誘導します。で、ストレッチャーに座ってもらうのですが、座りません!! いつもは、職員二人がかりで座らせます。が、この日は違いました。


 まず立っている状態で、ズボンとリハパンを膝まで下げておきます。こうしないと、服を脱がせるのも大変なのです。

「鳥丸さん、ここに座りますよ~」

 と声をかけると、すんなりストレッチャーに腰をかけてくれたのです。

 驚いた月猫は、思いました。(もしかしたら、なんとなく入浴のことがわかってきたかも。今日は、このままストレッチャーに仰向けに寝てくれるかもしれない)

 淡い期待を抱いて月猫は、両足を持ってストレッチャーの上に乗せる役目をします。先輩は、上半身を倒す役目です。


「鳥丸さん、足上げるからね。はい、横になるよ~」

 足が床から離れた瞬間、鳥丸さんは怖くなったのでしょう。いつもなら、ストレッチャーのサイドをつかむのですが、その日は私の胸ぐらをつかんだのです。


 えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~~

「鳥丸さん、手を離してぇ!」 

 と叫んだものの離してくれるはずもなく、私の顔は鳥丸さんの股間へと向かっていきます。迫る入浴前の股間…… あわや、マスク越しの接吻!!!


 えぇ。ギリギリでした。

 これは、うんこ事件の翌日の出来事でした(笑)

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介護俱楽部 月猫 @tukitohositoneko

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