第9話 クラスの高嶺の花が話しかけてきた



「おはよう、来夢くん」


「なに?神崎さん」


神崎 シオリ。


このクラス、というか学園でも1,2を争うほどの美少女と呼ばれている女子である。


クラスの男子では高嶺の花とか呼ばれているような存在だが、俺にとってはどうでもいい話だし。

ただのひとりのクラスメイトくらいにしか思っていない。


「今日、放課後の予定は開いてる?」


「なんで?」


俺がそう聞くと田中がやってきた。


「俺の予定は空いてますよっ!神崎さん!」


「俺も!俺も!」


他の男子たちも集まってきたけど神崎は俺だけを見ていた。


「私はあなたに質問してるの来夢くん。他の人達には聞いてない」


そのときだった。


ガラッ。


教室の扉が開いた。


中に入ってきたのはミカンだった。


教室の扉が開いたせいだろう、一瞬だけクラスの全員がミカンの方を見ていた。


「なんだ?あの美少女」

「やっべぇ。すっげぇ、スタイル……」

「神崎さんよりでかくね?」


そんな会話が聞こえる中ミカンは俺の方に近寄ってきた。


「ただいま、来夢」


俺の横の椅子に座るミカン。


周りに男子が集まっていた。


「転校生?」

「まじやっべぇ、美人すぎるだろ?!」

「俺、田中って言います!」


さっきまで話題の中心にあった神崎から話題をかっさらったミカン。


しかし当の本人は……


「ごめん、はっきり言って邪魔でうざいからどいてくれない?」


その一言で周りの男子たちを威圧していた。


「「うぐっ……」」


男子たちはダメージを受けたようで離れていった。

そして俺を羨むような目で見ていた。


「あいつ今日はあんな美人連れてきたのかよ」

「3日あったことが4日目はないなんてこと有り得ねぇよなぁ……」


俺はそんな視線を無視していると神崎さんが話しかけてきた。


「来夢くん、この人は?」


その質問にミカンは椅子を移動させて俺の真横にくると……ぎゅっと腕にしがみついてきた。


「これで、分からない?私が来夢のなんなのか」


「ぎりっ」


歯を食いしばった神崎。


だが、俺はそこでポツリと呟いた。


「ごめんね。ミカン」


「なにが?」


「俺、派手系はあんまり好きくない」


「ガーン」


ダン!

俺の机を興奮したように両手で叩いた神崎さん。


「分かった。来夢くん。明日の予定は開いてない?」

「明日?今のところは開いてるけど」


神崎はミカンのことを挑発的な目で見ていた。


「明日……目にもの見せてあげるから」


そう言って神崎は自分の席に向かっていった。


(結局なんなんだ、あいつ?俺と遊びたいのか?)




3時間目。

体育だった。


どうやら剣道をやらされるらしい。


「嫌なんだよなぁ、体育、しかも剣道。痛いしだるいし」


「ははは、お前が嫌じゃない授業でも教えてくれよ、来夢」


田中にそう聞かれて俺は答えた。


「何を言う、俺が嫌いじゃない授業なんてないぞ」


「だと思ったよ」


剣道の授業は始まって、30分くらい経過したときだった。


「んじゃ、今から試合でも始めるかっ!やりたいよな?お前らも!」


カラッと笑って教師が言った。


クラスの中の男子たちが2人1組で試合をしてトーナメントをしていくらしい。



ついに俺の番となった。


ちなみにだがこの剣道だが、体育館で行われており、男女で別れてるけど、お互いの姿が見えるようになっていた。


女子連中が俺たちの方を見ていた。


「むふふ、わりぃな来夢。ヒーローってのはヒロインの期待を裏切れねぇんだわ」


ちょいちょいっと女子たちの方に親指を向けていた田中。


「このバトル!俺が勝つっ!剣道部の名にかけてっ!とうっ!」


ダッ!


距離を詰めてくる田中。


そのときほむらの声が頭に響いた。


『来夢殿。一番手っ取り早く強くなる方法とはなにか分かるでござるか?』


夢の中で聞いた言葉だった。


そして、ほむらはこう続けた。


『脳のリミッターを解除して人間を辞めればいいだけでござるよ。火事場の馬鹿力を自分の意思で使えるようにするだけでござる』


初めて聞いた時は『何言ってんだこいつ』と思ったけど、俺は夢の中で人間の辞め方を教えてもらった。


制限解除アンリミテッド


ダッ。


俺は田中の頭上を軽々乗り越えて着地。

そして


「めーん」


気の抜けた声と共にポコっと後頭部を叩いた。


「へっ?」


田中は困惑していた。


「しょ、勝負ありっ」


先生も困惑しながらジャッジした。


女子の方から歓声。


「すごい!」

「え?!なにっ?!今のジャンプ力!」

「オリンピック出れるんじゃない?!あれ?!」


「「「きゃー!!すごーーい!!」」」


「ってか田中くん剣道部じゃなかったっけ?」

「素人に負けてるー」

「やめなよ。どう見ても来夢くんが強すぎただけだよ今のは」


「「来夢くんすごーーーい!!!」」


田中は四つん這いになって亀のようにうずくまった。


「おわぁあぁぁあぁぁぁ!!!なんでだあぁぁあぁぁっ!!!」


俺は田中に手を差し伸ばした。


「来夢、サンキューな」


「安心せい。MI NE U TIだ」

「峰打ちの意味分かってるか?」


俺は田中を立たせながら女子の方を見ていた。


神崎は俺の事を見ていた。


なんというか普段は見せないような【憧れ】の目で俺を見ていたような気がした。


ひょっとしてあいつ……


(もしかして俺の事好きだったりするのか?)


でも、派手系は好きじゃないんだよなぁ。これが。



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美少女な擬人化月曜日ちゃんが迎えに来た~日替わりで毎日違う女の子が俺の部屋にくる、毎日違う美少女を連れてる俺、なぜか学園の女たちにもとつぜんモテ出すがもう遅い にこん @nicon

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