ホモハムスター

第1話 アブノーマルなおっさんハムスター

中学生の頃、ゴールデンハムスターを二匹飼い始めた。

ペットショップで買ったのではなく、ハムスターを十匹以上飼っていた近所の蒲山さんがくれたのだ。


二匹ともオスで、名前は「村上」と「斎藤」。

全身真っ茶色なのが「村上」で、白色と茶色のまだら模様なのが「斎藤」だ。


なぜそんな名前にしたのか?


それはもらわれてきた初日に真っ茶色な方を一目見た瞬間、弟が「この茶色い奴、顔が村上にそっくりだぞ!」と言い出したことから始まる。

村上は我々兄弟共通の知り合いで、私から見てもホント村上にそっくりな顔だった。

村上本人がやや色黒で、まさに真っ茶色っぽい顔色をしていたのもあるが、特に目の配置がそのまんまに見えたからだ。


その日から真っ茶色のゴールデンハムスターは「村上」と命名された。

その村上といつもつるんでいたのが斎藤だったため、自動的に白色と茶色のまだら模様の方は「斎藤」になった。

ちなみに白色と茶色のまだら模様のハムスターは斎藤と顔が似ているわけではない。


もらわれて我が家に来た時点で二匹とも生後一年を過ぎており、それは人間の年齢に換算すれば40歳近いわけで、昨日今日ハムスターとして生きてきたわけではない貫禄に満ちていた。


要するに、初々しさのかけらもなく妙にオッサンっぽい。

それは成熟した大人のオスハムスターならば持っている身体的特徴を、二匹とも十分備えていたからでもある。

その特徴とは睾丸が体の比率に比べてやたらとデカいことだ。

もうそれはそれは御多分に漏れず本当に立派なものを持っていて、オスであることを雄弁に主張していた。

ゴールデンハムスターの性周期は4日であり、つまり通年にわたって繁殖が可能であるからあんなにオス全開なんだろうか。


だが村上と斎藤ではその使い道が違った。


より分かりやすく、かつ露骨に言えば使おうとする対象が正反対だった。

斎藤が使おうとする対象はメスだったが、村上は逆。


そう、村上はホモハムスターだったのだ。


二匹がそれぞれ入れられているゲージを掃除した後に間違えて一緒にしてしまった時に気づいた。


犯そうとするのだ、斉藤を。


大人のハムスターは通常同性の多頭飼いはできない。

オス同士、メス同士を一緒にしたら冗談抜きに殺し合いになる。

よって、普段は引き離して別々のゲージで飼っていたからそれまで全く気付かなかった。


しかも始末が悪いことに村上はタチであり、より最悪なのはケンカの強いオラオラ系ゲイハムスター。

斉藤の抵抗をあっさり制すると、かなわないと見て逃げる斉藤を猛然と追い掛け回し、後ろから組み付くと腰をカクカクし始めるという目を疑う光景が展開された。


さすがにハムスターにもゲイがいることが私も弟も信じられず、弟の友達たちのうちハムスターを飼っている者がいて、飼っているオスハムスターを持ってきてもらい、試しに一緒にしてみたら、同じように村上は襲いかかっていたから本物のゲイハムスターだった。


ちなみに繁殖させようと、後にペットショップからメスのハムスターを買ってきたのだが、村上は見向きもしなかったばかりか邪魔者として攻撃する有様。

本来ならば、最低オスとメスのつがいなら同じゲージで飼えるのだが。


以降「おかまハムスターがいる」と、村上は弟の友達の間で有名になってしまった。


かように人気者?になった村上だったが、栄光は長続きしなかった。


ある日のこと、ゲージから忽然と姿を消した。

ゲージの出入り口が空きっぱなしだったから、そこから脱走したと思われる。

それから村上は二度と姿を現すことはなかった。


一方のストレートで俗物の斉藤は逃げることはなく、後から購入したメスハムスターとの間に10匹以上子供を作るなどオス機能をフル活用して天寿を全うした。


それから、我が家では数年にわたり斉藤の子孫や他から購入したハムスターを飼い続けたが、やはり村上以上にインパクトのあるハムスターは斉藤も含めていなかった。


だって、ホモハムだったんだもの。

人類以外にもゲイがいることを中学生にして知ってしまった。

そんなもん知らせてどうすんだという感じであり、あともう少し我々が幼かったらどう解釈すればよかったんだろう?

両親に聞いても我々を納得させる回答を得るのは困難だったはずだ。


子供の情操教育に小動物を飼う家庭もあるようだが、甚だしくそれに不適切な個体もあるということは覚えておいても損はないだろう。


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コアラキムチ 44年の童貞地獄 @komaetarou

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