逃避行が紡ぐ、希望の物語。

本作品は、北行列車の中で出会った女性との出会いが、主人公の人生を一変させる物語である。

人生に疲れ果て、逃げるように旅に出た主人公の姿をリアルに描いている。

北海道への夜行列車の中で、同じように人生から逃げ出してきた一人の女性と出会い、二人は互いの心の傷を分かち合うことで、新たな人生への希望を見出していく。



この物語は、列車の中の情景、北海道の雄大な自然、そして何より、二人の心の機微が見事に表現されており、読者は、主人公と共に旅をして、彼の心の変化を追体験することができる文章になっている。

物語が示すのは、「人生の逃げ道は、新たな道につながっている」ということだ。

「勇気を出して一歩を踏み出せば、新たな出会いと希望が待っている」という望みを読者に与えてくれる。

特に「旅と同じように乗り換えができる」という女性の言葉は、心に深く響いた。

人生に行き詰まったとき、別の目的地に向かう列車に乗り換えることができる。人生はいつでも、やり直せるのだと。



心の機微を描く筆致は繊細でありながら力強く、希望を持って生きるためのヒントが詰まったこの作品をぜひ、オススメしたい。

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