凶暴なオオハクチョウ/佐佐木 定綱

カクヨム運営公式_文芸部

凶暴なオオハクチョウ


暁の光の道に導かれゴミ集積所にたどり着きたり


青白いもやの中より現れるヌートリアの子に広がる水辺


日々という風にさらされ荒れてゆく部屋にてトカゲは陽を浴びている


兄弟の繋がれた手に陽はさして列車は地上の駅に近づく


猫が消えてしばらくたった裏路地に老婆無限に餌を与える


幾百と繰り返したが誰一人飛び跳ねることなきミーティング


忍耐を試されている店員と客との間に蝶飛んで来ず


文芸のかなしみの如く加湿器の雲海に消ゆ本たちの山


遺失物拾得室の奥へ去る人形は目を見開いたまま


下書きを丁寧にして大人らが道に命令書き記す街


美しき二子玉川爆弾で爆破するならなお美しい


歯の生えたバッグが二体集まって歯の間から出てくるご飯


ハッキリとしない態度で凶暴なオオハクチョウに攻撃される


冷めていくフランクフルトハシビロコウは時の流れを見つめ続ける


前足に泥をまといてひたすらに白き獣が掘り起こす春


ささくれのできやすき人のそばにいて言葉をひとつひとつ選びぬ


直角に針当てられているときにバラックの影で水飲むヤモリ


送別を待つ空港で窓際の君が橙へと変わりゆく


黄昏ることにも飽きた砂浜でクラゲの中の夕日をつつく


風の吹くベランダにいて火を点けるときだけ友の目は輝いた



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