アルムガルドの侵攻
少しくらい考えが変わってくれたら……、くらいに思って街を見て回る許可をしたのだが、想像以上に思うところがあったようで、聖女はすっかり悪いものが抜け落ち、真に聖女らしく歩もうとしていた。
そんな彼女がまずやり出したのはこの領地にいる、彼女の旅が原因で住むところを追われた人たちに頭を下げて回ることだった。
もちろん一方的な彼女のエゴで下げられた人の方は良い迷惑。
門前払いを食らうことも度々あった。
被害に応じた補償をしようにもミリアはろくに所持品を持っていない。
だから誠心誠意謝って、この領地で手伝えることを手伝うだけだった。
そして、毎日通うこと一ヶ月。
流石に最初はまるっきり無視していた彼らもミリアの本来の人柄に触れ、ポツポツと話すようになってくると、だんだんと原因は聖女ミリアではなく、彼女を動かしていた元凶、アルムガルド王国や第二王子にあったのでは、と思うようになっていたのだ。
そんな折、俺の耳にとある情報が舞い込んでくる。
「アルムガルドがリンガイア王国に宣戦布告? 一体どうしてそんなことになっているんだ?」
聖女も失って、内紛を辛うじて押さえている状況のアルムガルドに他国と戦争をしている余裕はないと思うのだが……。
「そ、それが新聖女がリンガイア王国に攫われた、と言ってるんですよ」
「……新聖女? 一応王国からリンガイア王国に入るには俺の領地を通る必要があるのだけど」
思い返してみても新聖女なんて奴は通っていない。
「おそらくは存在しない仮想の人物を立てて戦争の引き金にしたのでしょう」
確かに今のアルムガルドならそのくらいやってもおかしくなさそうである。
「でも指揮できる奴なんているのか?」
一応聖女たちしか動かしてないので、アルムガルドの兵は使っていない。
減っていない兵を使えばどうにかなるとでも思ったのだろうか?
「とにかく襲ってくると言うのなら迎え撃つだけだな。落とし穴の罠を」
「かしこまりました。では、準備してきます」
いくらでも襲うところはあるのにどうしていつもうちなのだろう、と思わず頭を抱えるのだった。
◇◆◇◆◇◆
アルムガルド王都では、既に騒動が起きていた。
民衆のために自分の食べ物まで分け与えていた心優しい聖女様がリンガイア王国で行方不明になったというのだ。
「あの優しい聖女様を奪ったリンガイア王国の奴らを許しておけるか!? いや、許せるはずがない!!」
散々煽る王国の貴族たち。
しかし聖女がいなくなった本当の理由はお供につけていた護衛たちのせいなのだが、それはしっかりと隠していた。
民衆たちの評判が良かった新聖女。
今までなら貴族たちの言うことなど聞かなかった民衆だったが、今回に限って言えばリンガイア王国に憤慨していた。
ただもともと新聖女はこういう役目として使う予定であった。
所詮は神殿が定めた聖女。
神託もなければ聖魔法もかろうじて使えるだけ。
要は使い捨てだったのだ。
だからこそ自分たちの思うように動いてくれた新聖女には感謝もしていた。
おかげでアルムガルドの貴族や王族を狙おうとしていた暴徒の怒りの矛先がリンガイア王国へと向くのだから。
勝手に襲ってきてくれて勝手に倒れてくれる。
いっそのこと相打ちにでもなればいいのに。
そんな風に貴族たちは考えていた。
当然ながら兵として使う以上それを指揮するものはいる。
そのそんな役回りを受けた貴族はやる気のなさそうな表情をしていた。
もし敗色濃厚なら一目散に逃げるのが役目。
そんなことでも考えているのだろう。
しかし腐ってもアルムガルドは大国である。
元々従国だったリンガイア王国に負ける謂われはない。
それなら逆にいい役割なのかもしれない。
何もしなくて戦果がもらえる。
それでもリンガイアまでは遠い道のりである。
まともな食料もなく食べるに困る道中だろう。
恰幅のいい貴族は人一倍食事を消費する。
ただでもらえるものならもらいたいがやっぱり面倒くさく思うのだった。
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【全面改稿中です】
タイトル
『女性限定なのにスカウトされた僕、なぜか美少女VTuberとなる』
URL
『https://kakuyomu.jp/works/1177354054935631644』
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嫌われ王子、国を捨て亡国の王女を助ける 空野進 @ikadamo
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