聖女の決意

「えっと、このご飯、どうしましょうか?」



 どう考えても二人で食べきれる量ではない。

 かといってそのまま残すのもなんだか悪い気がする。



「このまま待っていたら戻ってこられるでしょうか?」

「あの二人は争い始めたら長いですからね」



 エルフの執事服をした男性が軽く頭を下げてやってくる。



「あの……、あなたは?」

「これは失礼いたしました。私はルーウェル。領主様の側付きをさせてもらっています」



 先ほどの元気な感じとはまた違う、物事を見透かそうとする冷静な視線。

 そういえばテオドール様の側に常に控えていた気もする。


 おそらくは彼のブレーンなのだろう。



「じゃあ、ごはんはどうすればいいのでしょうか?」

「そうですね。ではこういうのはどうでしょう?」



 ルーウェルはリナの目線まで腰を落とすとにっこり微笑む。

 そして、彼は大声を上げていた。



「今日はこちらに居られる聖女様方のおごりだ! 好きなだけ食べるといい!」



 その声にリナたちは一瞬固まっていたもののすぐさま押し寄せる獣人たちにあたふたとするのだった。



「い、一瞬でなくなっちゃいましたね……」



 あれだけ量があったと思っていた肉なのだが、数秒でなくなりさらにルーウェルが追加で山盛り持ってきてくれた分もあっという間になくなり、結局店の食材が空になったところでお開きとなるのだった。



「こ、ここまでお金を使わせてしまってよかったのでしょうか」



 護衛をしている兵に尋ねる。



「問題ありませんよ。このくらい、テオドール様なら予測されていると思いますので」



 当たり前のように答えてくる。

 店の食材一つを食べきることを予測しているなんて、どんなことをすると思われてたのだろう?


 なんだかテオドール様の自分に対する評価が気になってくるのだった。



「みんな、たのしそうだったね」



 リナは獣人たちからさんざん可愛がられ、最後には中央で歌を披露するほどだった。

 満足げに笑顔を浮かべている。



「みなさん、テオドール様のおかげで人を恨まずに済んでますからね」

「……えっ? それってどういう……」

「実はここにいる獣人の方々は前の大火災で住まいを失ってここに来られた方々なんですよ」

「あっ……」



 それでおおよその事情を把握した。

 確かにあの時、魔物を倒すためなら周りのことは一切気にしていなかった。



 でもそれが周りの人たちに被害を及ぼすことまで考えないといけなかったのだ。



「わ、私、いったい何をしたら……」

「何もできませんよ。過去には戻れないのですから。だから未来を考えてくださいね」

「未来……」



 改めて自分が何をすべきか、わかった気がする。




 ◇◇◇◇◇◇




 リナと街を見回ったあと、彼女が寝静まったのを確認するとミリアはテオドールを訪ねていた。



「こんな遅くにどうしたんだ?」

「実は折り入ってお願いがありまして……」

「さすがの俺でも第二王子たちを解放するのは難しいぞ?」

「い、いえ、そうではなくて……」



 今までやってきたことがやってきたことだけあってなかなか言い出しにくかった。

 それでもグッと気合を入れて言う。



「私もこの街に置いてもらえないでしょうか?」

「……どうしてだ? この街を見て回ったのならわかるだろう? ここにはお前のことを嫌っている獣人も多くいるんだぞ?」

「それでも本来のここの人たちはとてもやさしい人たちばかりです。それを見てこなかったのはひとえに私の力不足によるものでした……」

「だろうな。もう少しお前があいつらの前に立って陣頭指揮を執っていればこんなことにはなかっただろう」

「……はい。だからこそ私はもっと知らないといけないのです。何をすべきか。あの人たちに何ができるのか。もう過ぎたものは変えられないから……」



 ミリアは顔を伏せる。



「……わかった。住むところと当面の生活費くらいは保証してやろう。そこで自分に何ができるか考えてみるといい」



 あっさり承諾が出ると思っていなかったミリアは驚いてテオドールの顔を見る。

 彼は笑顔を見せていた。



―――――――――――――――――――――――――――――

【全面改稿中です】

タイトル

『女性限定なのにスカウトされた僕、なぜか美少女VTuberとなる』

URL

https://kakuyomu.jp/works/1177354054935631644


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