魔族の普通

「おう、チビども。しっかり食っているか?」



 話しかけてきたのはなんか面妖な気配がする男性だった。

 プラスとマイナス、どちらの気配を兼ね備えた男はパティシエ姿をしており、更に手には大量の悪魔の料理を持っていた。



「ちっ、なんで俺がこんなことをしないといけねーんだ、まったく……ほらよ、もっと食え」



 口で文句を言いながらテーブルの真ん中にその大量の料理を置く。



「あ、あの、私たち、こんなに頼んでないですよ……」

「店のサービスにしとけってテオ……、いや、店主からのめいれ……、指示だ」



 どうやら領主様がプレゼントしてくれたようだ。

 それを見て、リナは目を輝かせている。



「わぁ……、こんなにいただいていいのですか?」

「おう、食え食え。余ったら俺が食ってやるから安心して食え」

「いただきまーす」



 リナは嬉しそうにシュークリームを食べていく。

 頬にクリームがついていることもお構いなしに。



「ほらっ、ついてますよ」

「ふぁひふぁおーふぉあいふぁうー」

「何言ってるかわからないですよ。しゃべるのは食べてからにしてくださいね」

「ふぁーい」



 それからのんびりとリナを眺めながら自分ももう一つ、シュークリームを口に入れる。


 香ばしい生地はサクッと心地よい音を響かせ、中の生クリームはくどくなく優しい甘さである。


 ただおそらくはそういうことを言いたいのじゃないだろう。



 ――今持ってきた人、魔族でしたよね?



 誰か人を襲うわけでもなく楽しげにおいしい料理を給仕している。

 私たち以外にもお店に来ている人たちに笑顔を振りまいている。


 仕事はしぶしぶ面倒くさそうにやっている感じはあるが、それでもリナ相手に笑顔を見せてくれるほどの優しさがある。


 だからこそミリアはわからなくなる。

 本当に魔族って悪い人たちなんだろうか?


 確かに『魔族は悪』というのはさんざん言われてきたことで分かりやすい指標だった。

 でも果たして本当に悪だったのだろうか?


 そう言われてみると頷く自信はない。

 なにせ会ったことがないのだから。


 でも実際に会ってみると人と何も変わらないということがわかる。

 そんな相手を滅ぼそうとしていたのだろうか?


 そう考えると末恐ろしい出来事である。



「あれっ。せいじょさま。けわしいかおをしてどうしたの?」



 どうやら色々と考え込んでしまっていたようだ。



「そうだぞ。今から考え事をしていてはこの俺様のように大きくなれないぞ」



 そういうと今度は大量の肉料理まで置かれてしまう。



「とりあえず悩んでるときは食え。食って腹いっぱいになってから考えるといい」

「そ、そうですね。ありがとうございます」

「はははっ、いいってことよ。ところで俺はちょっと逃げるから聞かれたら知らないと言ってくれ」

「……えっ?」



 何かわからないが、突然給仕の男は走り去っていた。

 そして入れ違いにやってくる巨大な男。

 ……ってエルフ!?



 ほとんど人前に姿を現さないという伝説の種族が当たり前のように街の中を歩いている。

 そのことに驚いてしまう。



「おい、ここにグリム……っていってもわからないよな? なんかこう生意気そうなガキは見なかったか?」



 顔真似をしているがまるで似ていない。

 これじゃあおそらくは見つからないのではないか?


 そう思いながら聞いてみる。



「その方は何かされたのですか?」

「おう、俺の飯をパクって行きやがった。今日という今日は許せん」



 そう言いながら視線が皿に置かれた肉へと移る。



「これ……」

「さっきやさしいおにいちゃんがくれたの」

「ちっ、俺の飯じゃねーか!! そいつがどっちに行ったかわかるか?」

「あっちだよ」

「おう、さんきゅーな」

「あっ、このご飯は……」

「嬢ちゃんたちの飯を奪うわけにはいかねぇからな。あいつをとっ捕まえて何かおごらせるとするさ」



 こうしてすぐさまエルフの男も走り去っていくのだった。




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【全面改稿中です】

タイトル

『女性限定なのにスカウトされた僕、なぜか美少女VTuberとなる』

URL

https://kakuyomu.jp/works/1177354054935631644


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