悪の気配
館を出た聖女はまず建物の裏に回りツボを……。
「せいじょさま?」
「はっ!? な、なんでもないですよ。ちょっと道に迷っただけです」
「うっかりさんなのですね」
ちょっと言い回しは変えたけど間違いじゃないですよね?
人生の道に迷っているだけ、なのだから。
「それにしてもタンスを漁れない。ツボも探せない。宝箱も開けれない。普通の人はどうやってお金を稼いでいるのでしょうね」
「ふつうにおしごとをされてますよ?」
「……仕事?」
「えぇ、せいじょさまもいろんなところにいかれてたんですよね?」
「……えっ?」
確かに頼まれて色んなところに行っていたことは間違いない。
でも、それでお金を稼いでいたかというと……一切何ももらっていなかった。
むしろそれが普通なのだと思っていた。
そのかわりに色んなところでものを拾ってお金を稼ぐのが……。
「さ、さすがにいくらけんしんてきでもおかねがないとおしょくじもとれませんし、こまったひともたすけられませんよね? だからおふせってかたちでしっかりおかねはもらわないといけないってしんかんちょうがいってました」
「で、でも、お金がなくて困ってる人は……」
「そのひとたちはツケということでおしごとをあっせんしておかねをもらうってしんかんちょうはおっしゃってましたよ? でも、それがなかなかできなくてついわたしが、みをきればいいかなって」
仕事の斡旋って奴隷にするってことじゃないの?
ただ、リナはそのことに気づいている様子はない。
おそらく本当に普通の仕事を斡旋してもらえてると思っているのだろう。
やはり少し歪んだ純真だった。
「あなた自身が倒れてしまったらそれ以上人が助けられなくなるのですよ?」
「で、でも、こまっているひとがいたらたすけてしまいませんか?」
「それはわかりますけど、何事も限度がありますよ」
「……むずかしいですね」
リナは頭を悩ませていた。
「お互いまだまだ勉強ですね」
「は、はいっ、がんばります」
それなら何気なく町の井戸があったのでその下に……。
「せいじょさま!?」
「ち、違いますよ!? 井戸の様子を探ろうとしていただけです。悪い魔物が居着いているかも知れませんから」
「そ、そうなのですか!?」
「……まだ会ったことはないけど」
苦笑いを浮かべながら顔を背ける。
「そ、そんなあいてがいるのならしらべないといけないですよね」
「だ、大丈夫です。魔の気配はすぐにわかりますから。この街には魔の気配は……ありますね」
ないといって安心させようとしていたのにものすごく魔族の気配がしてしまいおもわず口にする。
「えっ!? ど、どこですか!?」
「街のほうですね」
「す、すぐにむかいましょう!」
「その方が良さそうですね」
こうして聖女たちは慌てて街の中へと駆けていくのだった。
◇◇◇◇◇◇
魔の気配がした先にあったもの、それは……。
「んーっ、あくまのたべものですぅ」
お菓子のお店だった。
最近になってようやく料理屋が増え出したガルド領だが、テオドール自身が考案した料理屋もいくつか出ており、そのどれもが大ヒットしている。
今回ミリアたちがいった店もその一つ、『悪魔のシュークリーム』という商品を販売している店だった。
確かに名前からして魔の気配そのものである。
「た、確かにおいしいですけど、どこが悪魔なのでしょうか?」
「それはですね、領主様はこのように仰っていました」
店員の人がまるで聞いて欲しかったといわんばかりに楽しげに答えてくれる。
「なんでもおいしいからって大量に食べると次の日、すごく後悔するらしいです」
「おいしいのにこうかいですか?」
「破滅ワードは“ぽっこり”だそうです」
「……?」
リナはよくわかっていないようだったが、ミリアはなんとなく事情を察していた。
「リナ、私の分も少し食べますか?」
「いいのです!? ありがとうございます」
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【全面改稿中です】
タイトル
『女性限定なのにスカウトされた僕、なぜか美少女VTuberとなる』
URL
『https://kakuyomu.jp/works/1177354054935631644』
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