JK ultra

第1話 終焉の序曲 1

　「みんなもドＭになろう！」

　渋谷の交差点にある大型ビジョンから、けたたましい声が発せられた。種種雑多なこの街は、多くの人で溢れかえっている。往来するその多くの人達の視線が、そのビジョンに引き寄せられた。

「受験生、社会人！日々を頑張りぬく君たちに、MMbeans！コーヒーよりも、断然集中力が続く！食べて、能力を全開放！自分自身を鍛えるんだ！さあ、君たちもドMになろう！MMbeans新発売！」

　スクリーンにMoonだけの文字が表示されると、画面は暗くなった。先ほどの宣伝が、辺りに余韻を残す。

「すんげー、ＣＭじゃね。」

と、交差点付近の地べたに座る複数のギャル達は、苦笑しながらそう呟いた。ギャル達だけではない。犬を散歩している女性もまた、苦笑気味だった。

　このＣＭは、アメリカ発のお菓子メーカーであるMoonが手掛けている。　　Surprising Enterpriseという会社のコピーと奇抜な発想で全世界に知られている。過去には、ギャップ燃え！？甘そうなのに、辛い。甘いの！？辛いの！？どっちなのチップスという商品は、日本でヒットを起こしていたりしている。今までにない斬新な商品とアイデアを出しているこの会社は、近年、日本の市場をメインにしている。

　大型ビジョンに、次の画面が映し出された。ウェーブをかけ、輝く黒髪の女子アナウンサーが、街中を歩く人達の視線を惹きつける。

「こんにちは。ストリートＮＥＷＳの時間です。昨日、アメリカ政府、海外お菓子メーカーMoonそして、アメリカの医薬品会社　Ocelliの三者が共同して行う国立高等衛生研究所Monocerosを設立することを発表。アメリカは、Moonが持つ流通力を活かして、未知のウィルスにも対抗できる薬を迅速かつ高品質なものを全世界に供給したいという意向を示しました。」