■モノローグ4
人も物事も変化することを止める事なんて出来ない、そんな事はわかっていた。
私が憧れたものは学校という環境で起こる因習を作り出す強さにしか過ぎないことは分かっている。それが卒業後に続くのか、また同じ力を持てるのかと言われたら恐らく様々な強さに埋もれてしまうのだろうと思っている。
まだ東自信もはっきりと自覚しているわけではないが、きっと彼女も憧れてしまった。憧れは動機に通じるし、動機が生じてしまったらどうしたって動かざるを得ないんだ。私がそうであったように、変化を迎えてしまう。
だけどさ、悔しい。まだ高校生活は続くのに、勝手に動機を見つけてしまって勝手に道を変えて歩き出そうとするなんてずるい。彼女が今まで浸ってきた強さは形も色も変わってゆくのだろう。けれど、私には動機がないから彼女の憧れたそれを私が追いかけることはないんだ。
今の強さと弱さを自覚して恥を飲み込んだ先、きっと憧れをたおやかな信念にしてゆくのだ。
何も考えずピュアに力を振るっていたから、その力へ何の執着も見せずにピュアな顔をして新しいモノに憧れてしまう。それが、本当に憎らしい。
入学の日に憧れた鋭い瞳の溌剌とした綺麗な人と仲良くなって、初めは打算も下心もたくさんあったけれど、一緒に居た事が楽しかった。楽さの中に、私が求めたものもあったから一緒にいる事を望んだ。だから良いことも悪いことも誤解も真実も全部知っている。全部良かったと思える。
でもその私が望む全部を持つ憧れた人に、一緒にいて、詰まらないと思われるなんて嫌だった。
きっと東はそんなところまで考えずに詰まらないと思うだけなのだろう。ただ信念が違うという理由が故にそうだということに、何も考えずに力を振るっていた彼女は気づくのだろうか。
わからないけれど、友達として物足りないと思われるなんて屈辱だ。
それに知っているから、私の方が先にその刃で傷付けられてその痛みを知っている。今私が手にしている力が人を傷つけるのは、兼ねてからの因習で私がやらなくてもきっと誰かがそれを振るう。だからその強さを捨て去るのであれば私こそがこの強さによって傷つけなければならないだろう。この力を捨てた人間こそ、この力の洗礼を受けるべきなのだ。これは『業』だ。この力と因習の因果は私に刃を振るわせざるを得ないのだ。
彼女と私に同じ傷がついて、これから何処へ向かうのかはわからない。この先果たして交わることがあるのか。きっと今日以上の劇的な出来事などもう私達の間にはありえないのかもしれない。
幻想標準世代 溝落 鉛 @aze000
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