第16話 冒険者ギッルド♪

「力持ちな訳アリの男なら一人心当たりがあるけど」


 フレーク領を治める令嬢フレンチーナの言葉に従い、私たちは冒険者ギルドへとやってきていた。


「うっひょぉ~! 冒険者ギルド! これが夢にまで見た冒険者ギルドばい!」


 異世界大好き、金物屋の少年カイトが歓喜の声を上げる。


「そんなに喜ぶようなもの? 普通の木造のギルドじゃん」


「えぇ!? あの冒険者ギルドばい!? あぁ……冒険者たちの胸踊る数々の英雄譚がここから生まれ、伝えられる冒険者ギルド! まさか俺が訪れることが出来ろ~とは……!」


 芝居がかった仕草で両手を広げくるくると回るカイト。


「はぁ~……ほんと子供なんだから……。冒険者ってそんな英雄とかじゃないと思うけどね。どっちかといえば……」


 背後から荒々しい声がかけられる。


「おぅおぅ! ガキと女がなにはしゃいんでんだ!? 邪魔なんだよ、クソが!」


 振り返ると厳ついハゲチャビン。


「カイトの夢壊すようで悪いけど、実物はこういうチンピラなのよね、冒険者って」


「あぁん!? 誰がチンピラだって!? っつ~かてめーらケツ丸出しで変態プレイの真っ最中か!? あぁん!?」


「ちょっ……きさん……!」


 ショウが食ってかかろうとした、その瞬間。


 チンピラの首元に、トオルが背後からナイフが突き立てる。


「うっ……!」


「ボクの愛しの人ファム・ファタールに喧嘩売ってるの? 殺されたいのかな? ボク、男を殺す趣味はないんだけどなぁ」


 グッ──。


 男の首元にナイフが一段食い込む。


「わ、わかったッ! 馬鹿にして悪かった~! すまん、謝る!」


 トオルが冷たい目で私を見る。

 私はふるふると首を横に振る。


「……フンッ、行けよ。そして二度とボクたちに関わるな」


「ひ、ひぃ……!」


 トオルのナイフから解放された男は足をもつらせながらドタバタと逃げ去っていった。

 私はグッ……っとトオルを睨む。


「あぁ、パル、感謝には及ばないよ。ボクは当然のことをしたまで……」


「なんてことしてんのよ、馬鹿ー!!」


「ば……ばか……?」


 トオルはまるで生まれて初めて怒られたとでもいうように目をまん丸く見開いて驚いている。


「いい!? さっきはフレンチーナちゃんのお目溢しがもらえたからよかったようなものの! こっちに来てるうちは、こっちのルールに従ってもらうんだからね! だから勝手なことはしないで! いい!?」


 トオルはきょとんとした顔を見せた後「……はい」と小声で呟いた。


 も~! 手応えないなぁ。

 ほんとにわかってんのかな?

 しかもなんかショウもショウで「ぅぅ~……!」みたいな声出して唸ってるし。

 なんなの、この男たち?

 はぁ……ほんっと異世界の男ってわけわっかんない。


「まぁ、いいわ。それじゃ行くわよ、冒険者ギルドに」


「わぁ~い! 冒険者ギッルド♪ 冒険者ギッルド♪」


 こうして私は。


 浮かれ気分の異世界マニア、カイト。

 締め込みをふんどしと言われたら怒るショウ。

 すぐにナイフを出してイキる色白美男子のトオル。


 という問題児三人を引き連れて冒険者ギルドのギィときしむ扉をゆっくりと開いた。



 ────────────


 【あとがき】


 ここまで読んでいただいてありがとうございます。

 ブクマ、PV的にぽっきり心が逝っちゃったのでここで終わりとさせてください。

 ★をいただけた方、本当にありがとうございました。嬉しかったです。

 また別の作品でお会いしましょう!

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夜な夜なふんどし姿の男たちが村人を連れ去っていきます ~異世界で山笠なる祭りに巻き込まれた私、男たちを取り仕切る「ごりょんさん」となって万年最下位チームを優勝へと導きます~ めで汰 @westend

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