第15話 令嬢フレンチーナ
金髪ロングのふわふわパーマ。
気の強そうな顔。
ほっぺたを膨らませてプリプリと怒っている少女。
か……かわい~!
「ちょっと!? 話聞いてる!?」
「え、あ? なんだっけ?」
「キィ~! なんだっけじゃないわよ! まったく! これだからインジャ村の田舎者はまったく!」
衛兵さんたちに連れられた私たちは、この少女と一緒にここシャーケの町の領主さんの館に連れて行かれ、事情を聞かれていたのだった。
「いや、あなたがかわいいな~って思って見てただけ何だけど……」
正直に答える。
だって、ほんと~~~にお人形さんみたいで可愛いんだもん!
「かかかか……かわいい……!? この私が可愛いですって……!? きゅきゅきゅきゅ、急に何言ってるのこの田舎娘は……!?」
「あはは、照れてる。かわい~」
「て、照れてなんて……! あぁっ! もうっ! このフレーク領領主の一人娘フレンチーナ・シャーケ・フレークに向かって田舎娘ごときが馴れ馴れしく……!」
領主?
シャーケ?
「シャーケって町の名前とおんなじだね」
「当たり前でしょう! なんてったってこの町は私の誕生とともに名前も新たに『シャーケ』へと変更したんですから!」
「あ、そうなんだ。知らなかった」
「し、知らな……? そんな……嘘でしょ……? だってあなた、ちょくちょくこの町に来てたじゃないの……」
愕然とした表情で目を見開くフレンチーナちゃん。
「来てたけどなんで知ってるの?」
「なんでって、そりゃギグ様が……こほんっ! な……なんでもないですわ!」
んん~?
もしかしてこの子……。
「ギグのことが好き……」
「わ~! わ~! わ~! な~にを言い出すのかしら、この田舎娘は! 死罪! 今すぐ縛り首にしなさい!」
涙目で手をバタバタと動かすフレンチーナちゃん。
「フレンチーナ様、それは無理ですぜ。あっしらはただの自警団。勝手に縛り首になんか出来ません」
「も~う! 使えないわね! 大体! こんな怪しい連中、一刻も早く捕まえるべきでしょう! 私はナイフを突きつけられたのよ!? それに……!」
顔を真っ赤に染めて口ごもるフレンチーナ。
「その……ふ、ふ、ふんどし……」
「やけん、ふどしじゃなかって! 締め込みやって言いよろ~が!」
「ショウも口答えしない! 空気読んで!」
私はこの三人が森の奥から出てきたばかりの部族ってことにして説明した。
だってまさか「異世界からきました」なんて言っても信じてもらえるわけないもんね。
まぁ、これも異世界に詳しいと自称するカイトの案。
なんでも私たちの世界みたいな本をたくさん読んでるらしい。
っていうかこっちからしたらあっちが異世界なんだけど。
「で、そのフレンチーナお嬢様は、なんで私の名前を知ってたの?」
「ふぇ!? そ、そんなの領主の娘として領民の名前を覚えておくのは当然……っていうか、あの、その、今日はギグ、は来てないのかしら……?」
目をそらして落ち着きなくモゴモゴと言うフレンチーナを見てピーンと来た。
はは~ん、この子……。
ギグのことが好きなわけだ!
なるほど~、なるほどね~。
それで、ギグとよく一緒に街に来る私のことも知ってたってわけか。
あらあら! まぁまぁ! ギグのやつ!
いつの間にかちゃっかりこんな可愛い子のハートを射止めちゃって!
隅に置けないじゃない!
「ギグなら今日は村で力仕事してるわよ」
「そ、そうなんだ……」
しょ~んとした様子で落ち込むフレンチーナ。
きゃ~! わかりやすくてかわいい~!
「でも安心して!」
私はキラキラ目を輝かせてフレンチーナの手を握る。
「ふぇっ!?」
「あなた達が二人で会えるように私がセッティングしてあげるから!」
「ふぇ!? ふぇ~~!? そ、そんにゃ……! はにゃ……!」
耳まで真っ赤でお目々キョロキョロするフレンチーナちゃん!
あ~、なんてかわいいの~!
と、フレンチーナちゃんに萌える私なのだったが、きっちりやるべきお仕事もこなします。
「その代わり……お願いがあるんだけど」
「な、なにかしら……?」
ふふふ……。
キラーン。
私の目が光る。
「力持ちな男を探してるの」
「力持ち……?」
「ええ、住所不定で若い男だったら特にいいわね……」
ふふふ……そう、今すぐにでもインジャ村に移住してくれそうな若い男が。
「パ、パル……? あなた一体……?」
私を見るフレンチーナの顔が僅かに恐怖に歪んだ。
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