第14話 シャーケの町
一番近くの町まで出かけた私達の馬車に潜んでいた真っ白しろすけ、ホストのトオル。
私はその不気味に歪む薄衣のような笑みを見ながらツネに言われた言葉を思い出していた。
『トオルに会っても絶対関わるなよ! あれはほんもんのサイコパスやけん! もうすでに何人も人を殺しと~って噂も耳にするけんね……』
ダメじゃ~ん!
関わっちゃってるじゃ~ん!
関わってるっていうか、異世界についてきちゃってるじゃ~ん!
どゆこと~!?
しかも馬車に乗られちゃって逃げ場なし!
めっちゃ危機!(涙目)
「てめぇ……! なんでここにおるとや!?」
組みかかろうとしたショウの動きを、トオルの取り出した折りたたみ式ナイフが静止させる。
「お~っと♡ ボクに手を出すなよ? ボクはそこのパルちゃんに殺してもらうんだから。むっさい『山のぼせ』は、お・こ・と・わ・り♡」
「ちょっと、カイト! あんたの『異世界知識』とやらでこれなんとかならないの!?」
「ふぇ~、ムリぃ~! だってこれ、ほぼ異世界関係ない出来事だし~!」
情けない声を上げるカイト少年。
「ああっ、ったく使えないわね! こうなったら──!」
グイッ!
ヒヒ~ン!
グラッ!
「ショウ、今っ!」
「お、おうっ!」
馬車の揺れを利用してよろめいたトオルをショウが取り押さえる。
トオルの手から落ちたナイフをカイトが拾う。
「よし! さすが私!」
「取り押さえたのは俺だろうが!」
「ちな、ナイフ拾ったのは俺ね!」
自画自賛に余念のない私達三人は、そのままトオルを取り押さえたまま近隣の町、シャーケへとたどり着いた。
◇◆◇◆フレーク領シャーケ◇◆◇◆
私の知る限りこっちで一番大きな街。
シャーケ。
その入口の
「おぉ~い! こいつ取り押さえる縄買ってきてくれ!」
道中ずっとトオルを取り押さえてたショウが声をかけてくる。
「あ~、だね。こっちの人に迷惑かけるわけにもいかないもんね」
そう答えて街に向かおうとすると。
「ちょ~っと! あんたっ!!」
髪の毛ふわふわのお人形みたいな女の子に声をかけられた。
「……ふぇ?」
「あんたよ、あんた! あんたに言ってるのよ、インジャ村のパル!」
え、なんで私の名前知ってるの?
私、もしかして有名人?
でも、私はこの子のことなんか全く知らない。
「えっ~と……どちら様でしたっけ?」
「きぃ~! 私を知らないなんてなんて不敬! これだからインジャ村の田舎者は!」
地団駄を踏んで悔しがる女の子。
可愛いドレスのフリルがふりふりと揺れて可愛い~。
なんて思ってると──。
「フフフ……キミぃ? ボクを殺してくれる
取り押さえられてたはずのトオルが女の子の頬にナイフをペチペチと当てていた。
「ちょ……! あんたやめなさい!」
「オーケー、オーケー! キミが言うならやめるよ、親愛なるパル?」
「誰が『親愛なる』よ! 気安く話しかけないでくれる!?」
馬車からショウ&カイトが飛び出してくる。
「パルっ! 大丈夫か!?」
「ゴメン! ナイフ取り返された!」
と、飛び出してきたはいいんだけど、二人は当然締め込み姿。
二人を見た少女が青ざめる。
あ~あ。
「へ……へんた……い……」
クラッ……!
「おっと」
トオルが気を失った少女を抱きとめる。
と同時に町から騒ぎを聞きつけた衛兵さんが駆けつける。
「なにごとだ!? うおっ、ふんどし!?」
「ふんどしじゃなかっ! これは締め込みたい!」
例によって言い返すショウ。
あぁ……もう……。
私は頭を抱えた。
だって、これから起きる面倒な説明をするのはどうせ全部私なのだから。
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