🤔考察厨の私が異世界に来たので今後の展開を考察してみた

ぞいや@4作品(■🦊🍓🌏挿絵あり)執筆中

1話:考察厨、異世界でも考察する

「ここは……なるほど、異世界だな」


 始まりは、友達の肝試しに誘われたこと。

 地元で有名なオカルトスポットである「某トンネル」に来たらコレだ。


 トンネルを抜けるとそこは雪国ではなく、大空を翔る“ドラゴンの背中”。

 それも鱗に直で乗っている訳ではなく、取り付けられた「二人乗りの鞍」に跨っている。


「ちょっとッ、誰ですかアナタ!? いつの間に僕のドラゴンタクシーに乗り込んだんです!?」


 私の前に座る少年が、ドラゴンの口から伸びる手綱を引きつつ慌てた声で振り返った。

 ゴーグルを掛けた可愛らしい声の少年で、後ろでくくった髪が大空にバタバタとなびいている。

 背丈から察するに10歳前後で、服装から何から異世界感が半端ない少年だが――彼の質問に答えるのは後だ。


「今から考察する。少し黙っててくれ」


「黙ってろって、ここは僕のドラゴンタクシーですよ? た、タダ乗りは許しませんからね!!」


「わかったわかった。とてもよくわかったから少し黙っててくれ。私の考察の邪魔をすると、お姉さんがボクにディープキスしちゃうぞ」


「でぃ、でぃーぷキス……?」


 少年はディープキスを知らないのか、私の返しに困惑の表情を浮かべる。


 ちなみに今更だが、私は女だ。

 花も恥じらう19歳の大学生で、かくいう私も恥ずかしながらディープキスの経験は無い。

 なお、好きな男性のタイプは年下の可愛らしい男の子で、ぶっちゃけ私の前に座るこの男の子はストライクどんびしゃ。


 法律とかアレコレ無視して、今すぐこの少年とディープキスしてみたい!!

 という衝動を抑えつつ、私は得意の「考察」を始める。


(さてと、この先の展開を予想する――その前に、まずは状況整理だな。情報整理こそ考察の基本。今ある全ての情報を整理し、そこから逆算して真実に辿り着くのが真の考察厨というもの)


 世の中には情報を整理せず、感情のままに自分の理想を並べるだけの「なんちゃって考察厨」もいるが……私は認めない。

 流行りのモノに飛びつき、イナゴの様に食い荒らし、再生数が伸びなくなったら別のコンテンツに乗り移る輩を――



「私は断じてッ、考察厨とは認めない!!」



 吃驚ビクッ!!

 少年が身体を震わせ、何ならドラゴンも身体を震わせた。


「なッ、何ですか急に? いきなり大声出さないで下さいよ」


「あー、すまない。お詫びに後でお姉さんがディープキスしてあげるから、今はちょっと静かにしててくれ。ちなみにタダでしてあげるぞ」


「え、タダですか? でぃーぷキスが何かちょっとよくわからないですけど……まぁ何か貰えるならいいか」


 よしッ、これで人生初のディープキスを確約した――などと喜んでいる場合ではない。


 遊びは程々にして考察に戻るが、ドラゴンがいる以上ここが異世界なのは間違いない。

 オカルトスポットになったあの某トンネルを基点に、何やかんや不思議な力が働いて異世界転移した、というのが妥当な線だろうが、しかしながら私を肝試しに誘った「親友:ミッチー」の姿が見当たらない。


 私だけ異世界転移したのか。

 もしくはミッチーも異世界転移したものの、私とは別の場所に転移してしまったのか。

 これに関しては情報が無さ過ぎるので、これ以上の考察は無意味。


 となると、考察すべきは「これからの展開」か。


(重要なのは、私が飛ばされたこの異世界が“どういう世界なのか”ということ。スローライフ系の緩い世界なら大歓迎だが、能力バトルやデスゲーム系は勘弁だな。魔法は楽しそうだからあってもいいけど、私だけ魔法が使えなくてしいたげられる、みたいな世界は嫌だな)


 あと、努力とかもしたくないので、チートスキル的なモノが私に備わっていない限り「戦う系」はアウト。

 兎にも角にも痛そうな事に巻き込まれるのは勘弁願いたく――


「くしゅんッ」


 唐突に、少年がくしゃみした。

 その後にズズッと鼻を啜る音が聞こえてくる。

 大空を飛ぶドラゴンの背中で、本来なら風の音に消されて聞こえないだろうが、不思議と私の耳に届いたのだ。


「何だ、寒いのか?」


「いえ、そういう訳では……ただまぁ、ちょっとだけ薄着だったかなと」


「やはり寒いんじゃないか。どれ、お姉さんが温めてあげよう」


 後ろから抱擁ぎゅッ


「あの、ちょっと?」


「これで少しは温かいだろう?」


「え……まぁ、はい」


「なら、しばらくはこのままで。風邪を引くといけないだろう?」


 ――決まった。

 少年の耳元で、少し良い声で言ってやったぜ。


 後ろから抱き着いているので彼の顔は見えないけれど、その耳は赤くなっている。

 大空の寒さで元から赤かった気がしなくもないが、きっと私に照れているのだろう。


(何て可愛い生き物だ。いずれ私がこの少年と結ばれるのは、コレはもう確定と考えて良いだろう。見知らぬ世界で出逢った男女二人が、いずれ恋に落ちて結婚するのは王道にして正義。この少年も、何だかんだで年上のお姉さんが好きに決まっている)


 ありがとう異世界転移。

 19歳にして未来の旦那を手に入れることが出来た。


 ――ん、何?

 感情のままに自分の理想を並べているだけじゃないか、だと?

 結局はお前も「なんちゃって考察厨」じゃないかって?


(……まぁそれはさて置き。私達の未来には問題も山積みだ)


 少年と共に地球に戻るのか、それとも異世界で暮らすのか。

 どちらが私達にとってより良い選択なのかは、流石に今の情報量では判断出来ない。


 今のところ、この異世界がどういう世界なのか判別できていないし、私達の未来をより良くする為には、更なる情報を手に入れる必要がある。


「少年、キミは先ほど“ドラゴンタクシー”と言ったね? つまり少年は、このドラゴンに客を乗せて移動する商売をしている、ということで合っているかな?」


「そうですけど……それが何か?」


「いや、ただの確認だ。ついでにもう1つ確認するが、少年の好きな女性のタイプは何かな? 年上のお姉さんだったりするんじゃないかい?」


「えっと……あの、さっきから何か勘違いされてるみたいですけど、“ボクは女ですよ”」


「へ?」



 ■



 ~ 1年後 ~


 チートスキルも無しに努力のみで能力バトルのデスゲームを勝ち抜いた私は、まぁ何やかんやで楽しくやってますよ。

 隣に居るドラゴンタクシーの少女と一緒にね。


            【完】

 ――――――――――――――――

*あとがき

普段は男性主人公ばかり書いているので、女性の主人公も書いてみたいなと思った結果、こうなりました。

口調がこんな感じなので可愛げはないですが、キャラとしては気に入っています。

長編物を書く余裕が無いので一話完結となりましたが、機会があれば続きも書いてみたいですね。


本作に限らず「更新頑張れ」と思って頂けたら、作品の「フォロー」や「☆☆☆評価」を宜しくお願いします。

お時間ある方は筆者別作品「■黒ヘビ(ダークファンタジー*挿絵あり)/🦊1000階旅館(ほのぼの日常*挿絵あり)/🌏異世界アップデート(純愛物*挿絵あり)/🍓ロリ巨乳の幼馴染み(ハーレム+百合*挿絵あり)」も是非。

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