第2話

フィンリーが、故郷レペンスから母であるアナスタジアに連れられ、隣町マンジュリカで傭兵エイルと出会ってから2日が経った。帝都まではあと1日。今晩泊まるウィステリアの街から出る定期船に明日の昼に乗れば3時間ほどで着く。


「ねえ、エイル。」


エイルが、ベッドに座り、槍を磨いていると、実家から連れてきたメジロのバジルとベッドに寝っ転がり、遊んでいたはずのフィンリーに突然話しかけられた。


バジルもこちらをまじまじと見ている。


「何だ?突然改まって。こんな時間に腹でも空いたのか。」


エイルは、故郷にちょうどフィンリーの年頃の弟がいる。フィンリーはあまり女の子らしいとはいえない性格なため、エイルは自分と5歳差で、弟と同じ歳のフィンリーを非常に話しやすく感じている。


「酷いなあ。ちがうよ!!


明日、帝都に着くじゃない。

魔笛の試奏会でも、名前を偽らなきゃいけないのよね、家に帰るまでは苗字は偽れってお父さんからもお母さんからも言われたけれど。


お父さんとお母さん、なんでそんなに帝都で嫌われてるのかしら。


エイルはお父さんの親友の剣士の弟子なんでしょ?何かきいてない?」


「、、!!フィンリーは何も聞いてないのか?ヨルグさんや、アナスタジアさんから。」


エイルは明らかに動揺した様子で尋ねる。フィンリーはそれでさらに不審に感じた。


「聞いてないから聞いてるのよ?

そんなに恥ずかしいことでもしたの?

きっとお父さんのせいねー、お父さんほんとに変わり者だから。ねー?バジル?」


フィンリーがバジルに声をかけると、バジルは数回小さく鳴いてから、フィンリーの肩に乗った。


「、、何も知らないなら今のうちに忠告する。絶対に苗字は名乗らないことだ。


ヨルグさんは、帝都で研究していた若いころ、帝都の意向に沿わない研究をして、破門されたんだそうだ。意向、婚約者だったアナスタジアさんともども帝都に出入りは禁止になった。


、、一応、子どもまでは出入り禁止と言われていないようだけど、仮に魔笛を奏でることができて召喚士の素質があっても、ヨルグさんの娘だと召喚士にさせてもらえないかも知れない。」


エイルは、行方不明の剣の師から以前聞いたことを思い出しながら話す。


「意向に沿わない研究って?お父さんがあまり鳥を召喚する術や、神鳥に関して研究しないから?」


フィンリーは、ヨルグにそっくりなエメラルドの瞳を丸くしながら、バジルを片手であやしているせいで、落ちてきたアナスタジア似のプラチナブロンドの長い前髪をもう片手で払う。瞳以外はアナスタジアに似ており、違うのはフレデリカがロングヘアの天然パーマだが、フィンリーはストレートのショートな点だ。


「私にはそこまでわからない、、というか、師匠から聞いたのはここまでだ。

明日の魔笛の試奏会は朝9時からだ。私も寝るからフィンリーもそろそろ寝ないと。」


エイルは、槍をしまってから、おさげにまとめているストレートの黒髪の紺のリボンを外し、寝る準備を始めた。

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Saint Bird Canarie @Canarie

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