第6話 エリネアの苦悩
(ここから小魔王エリネア視点)
あ……あそこから見えるのは…… わたしの方からやってきた勇者……『魔法少女』ですか?
ありえない……もう魔法少女がこっちに向かってきたなんて。
「大魔王様!メガルファ様……」
わたしはそう言いながら魔族の大群を潜り抜け、階段を登りました。
全ては魔法少女の脅威と詳細をメガルファ様に伝えるため……
「エ……エリネア様!どこに行くおつもりですか!」
「決まっているでしょう……『魔法少女』が……!わたしたちの『
「そうですか。では行ってください」
「はい……」
わたしはそのまま大魔王様の部屋に辿り着きました。
————
「失礼します……魔王様」
「なんだ、エリネア?何か問題でも起きたのか?」
「そうです……問題が起きました……」
「そうか、まあいい。そこにある椅子にでも座れ」
「はい……」
わたしは椅子に腰掛けて話を始めました。
「それでなんですけど……わたしのところにいた勇者が城に侵入してきたんです」
「ああ、『魔法少女』とか言ったな。どんな連中なんだ?詳しく教えてくれ」
「えっと……その……『魔法少女』……正式名称は『魔法少女ミラコロマギア』。4人の人間の少女の見た目をしていて……わたしたちとおなじように魔法を使ってきます」
「魔法を使ってくるのか?それだけだと我々となにも変わらないように見えるが」
魔王様がそう言ったのを聞いて、私は机を思い切り殴りました。
「魔王様は本当の『魔法少女』の恐ろしさをなにも分かっていませんね……彼女たちの魔法は見たこともない規格外のものです……魔族が喰らったら塵になるような恐ろしいものなんです……系統が違うからか無効化できないことも確認しています」
「何だと?魔族が使えなくて人間が使える魔法が存在するのか?」
「わたしも数日前まではそう思っていました……でもわたしは見てしまったんです」
人間は本来、魔法を使えない種族……。
そんな事実、とっくにわかっていますよ。でも、あれは……彼女たちは人間であって人間ではない、特殊な人間なんです。わたしは見てしまいました。
それに、数世紀前には「魔女」だとか「呪術師」だとか「仙人」だとか、魔法やそれに近いものを扱える人間がいたらしいんです。
「そんな恐ろしいものなのか、魔法少女というのは……」
「はい。ですからすぐにでも戦闘準備をしておいた方が良いかと」
「わかった。とりあえずお前は下に降りておけ。それまでに魔力を貯めておく」
「承知しました」
わたしは席をたち、そのまま下に降りていきました。
————
(ここから大魔王メガルファ視点)
数時間後。
階段を登る足音が聞こえる。
半開きのドアを通り過ぎる嗅いだことのない独特な匂いからして、彼らは魔族ではないのだろう。
となると人間、それも私を討ち取りにきた勇者だと確信する。
勇者がドアを開けると、そこにはピンク色の単純化されたドレスのようなものを着た人間の少女がいた。
「あなたが神様の言ってた大魔王メガルファなの?」
「カミサマ?なんだそれは?とにかく、お前が魔法少女・ミラコロマギアだな?部下の報告から聞いたぞ」
「ええ、そうよ。そして、あなたを倒しにきたの」
「ああ。だが、いくら魔法を使えるといえど、たかが人間の小娘一人で私を倒せると思うな。それに貴様、本当はあと三人仲間がいるようだな?」
「ええ、そうよ。私にはあと三人仲間がいる。でも、急に雷が落ちてきて撃ち落とされちゃった」
「なら、貯めていた力の4分の1程度で良さそうだ。上級火炎魔法、ミッテル・ゲヘナ・フラム!」
私はそう言い、炎の塊をミラコロマギアにぶつける。
女や子供だろうと私は容赦しない。それが勇者であるのなら。
私の炎魔法は彼女を直撃。少し息はあったが、もう立ち上がれる状態ではなかった。
「どうだ勇者よ。私の民を傷つけた罰は効いたか?」
「こんなの……ありえない……私は元の世界に戻って……アンタたちキラーインから世界を守らなくちゃいけないのに!」
「キラーイン?何を言っているかは知らんが、世界を守らなければならないのはこちらも同じだ。私はこの世界の王として、この世界の魔族をお前たち勇者から守らなければならないのだ」
私がそういった数秒後のことだった。ドリケラがランドスライドで発生させた岩から、ガサガサと音を立ててハムミンが飛び出してきた。
「ミラコロピンク!なんで倒れているハムか!」
「ごっ……ごめんなさい……あのキラーインに負けちゃった」
「しっかりするハム!今から癒してあげるから立ち上がるハム!」
ハムミンがそういうと、黒焦げになっていたミラコロマギアがどんどん元の色合いに戻っていき、そのまま立ち上がることができた。
「ありがとう、ハムミン。これでもう一度戦える」
ふむ。ハムミンを倒さない限りこの人間はいくらでも復活し続けるのか。ならばこうするしかない。
「封印魔法、スフラギダ!」
私のかけた封印魔法により、ハムミンは私の手のひらから出現した黒い立方体の中に吸い込まれていった。
「ハムウゥゥ〜〜〜!」
これでこの鬱陶しいネズミはいなくなった。
「もうこれでお前は復活できなくなったぞ。それでも立ち向かうというのか?」
「えっ……ハムミン!ハムミンがいなくなったの?」
「ああ、その通りだ。これで奴はいなくなった。今のうちにお前も捕えるぞ!ライトニング!」
私は雷魔法を唱えて彼女の頭上に雷を落とす。これで彼女は体が痺れて動けなくなった。
「よし。プデラー、こいつを連れて行け」
「わかりました!」
私は司法を担当する側近のフデラを呼んだ。彼は固有魔法でミラコロマギアを拘束し、そのまま牢屋に転移させた。
「よし、これでとりあえず『魔法少女』の脅威は一旦過ぎ去ったな。だが、あとの三人がいつ来るかはわからない。残りの60%の魔力は温存しておこう。まあ、今は勝利のコーヒーでも飲むとするか」
私は久しぶりにコーヒーを作り、淹れることにした。
GATHERLAND〜魔王様があらゆる世界からやってきた勇者と戦うようです〜 益井久春 @masuihisaharu
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