最終回 この手を離さない!

      『エピローグ』


      ※※※ 手紙 ※※※


【拝啓。ゲイル、ガイオスさん、それにイーグル。元気してる? 『私たち』はあれから色々あったけど、やっと落ち着いてきたよ。


 早いもので私たちが帝都で、最後の決戦をしてからもう『半年』が経つんだね。みんなが力を合わせて、なんとかなったけどレオは……。


 知っての通り、レオは記憶喪失……『神の雷』を消滅させるべく、限界以上の力を引き出した弊害なんだろうね(T_T)


 レオは……『私のこと』は覚えていた。『幼馴染み』で小さい頃、お嫁さんにしてくれるってことまで……。


 でも、それ以外のことは……『全部』忘れちゃった。みんなのこと、自分が『何者』だったってことも……(;つД`)


 あの時は、みんなで途方に暮れたよね。私のエリクサー、色んな薬を試してみたけど効果なし……。

 極めつけは専門医に今後、記憶が『完全に戻ることはない』って宣言されたこと。


 特にイーグル、すごく落胆してたね……「オレはもう戦わん」って、武器を棄てたもん(*´ー`*)


 帝都も、しばらく『混乱』したよね。レオを主体に『新国家』を興すつもりだった。けど、いつまでも下を向いてるわけにはいかない。


 反乱軍の副将さんを中心に『民主化』に向けて動いている。元々、皇帝を打倒後に計画してたみたい。

 まだ安定するには時間が掛かるけど、早速『総選挙』に向けて忙しいみたい。


 なんでもゲイルが、立候補したって聞いた時はびっくりしたよぉ(゜Д゚*) 『山奥の村』でもみんなをまとめてたから、案外向いてるかも(;゚∇゚)


 ガイオスさんも、町のみんなと上手くやってるみたいだね。しかも、奥さんとお子さんが『戻ってきた』って聞いてびっくりΣ(゚Д゚ υ)

 私とレオも落ち着いたら、町に遊びにいくね(・∀・)ゞ


 イーグルは……ショックで、しばらく音沙汰なしだった。けど、ある日突然手紙がきて『外の世界』に旅立つんだって(゜ロ゜)

 世界を見て回って、いつかシャルジャを『世界一の都市』にするんだって。


 彼はそれで、レオを超えるみたい。何はともあれ、立ち直ってくれてよかったよ(*´-`)


――そして


 私とレオは――


 ◆ ◆ ◆


「うーん……っと! 色々書いたけど、まだ全然書き足りないよぉ」


 私は一旦筆を置いて、伸びをした。私とレオは『平穏な生活』を求めて、また旅に出た。


 まだどこで何をするかは未定。今は宿屋の一室で、この手紙をしたためている。


――コンコンコン。


 部屋の扉がノックされ、私は「はーい」と振り向いた。程なくレオが入ってきた。


「ヒメナ。まだ起きてたのか?」


「ちょっと夜更かしかもね。手紙を書いてたら、夢中になっちゃって」


 レオは「そうか」と、一つ頷く。


「……? どうしたの、改まっちゃって?」


「……つい先ほど、思い出した。ずっと、ヒメナに『伝えたいこと』があったと」


 え……? 私は思わず、レオの顔を覗き込んだ。


「レオ、あなた記憶が……?」


「……分からない。大切な君に関しても、一部しか思い出せない。私はヒメナの隣に立つ資格が、あるのだろうか……?」


 俯く彼を、私はそっと抱き締めた。


「……ぁ……」


「いいんだよ、レオ。ムリに思い出さなくて。あなたはこれまで、たくさん傷ついてきた。『思い出』は、これから私たちで創ればいいんだよ」


 レオも「ヒメナ……」と、私を抱き寄せた。そして、小箱を取り出してそっと開けた。


 そこには、キラリと光る『指輪』が……


「ヒメナ。ずっと君に、伝えたかったことがある」


 レオはハッキリと口に出した。



「世界中で、誰よりも愛する貴女ヒメナへ。私と『婚約』してほしい。もう貴女がいない世界など考えられない」



 ……………………ぁ……………………



 私ことヒメナ・アンジェロは一瞬、目の前の元皇子レオ・ネフィリムから何を言われたのか分からなかった。


 これは『夢』……? まさかこんな日が来るなんて……。足元がフワフワして、まるで現実味がない。


――ヒメナ。悪いが、貴女との婚約を破棄させてもらいたい。


 あの『悪夢』の婚約破棄が、つい昨日のように感じる。嘲笑され逃げ出し、私は長い階段を無我夢中で駆け降りた。


 ずっと『魔法』は、解けたとばかり思ってた。けど、レオは……片時も『ガラスの靴』を手放さなかった。

 いつか私に渡したい……そう心から願っていたのに、ずっと『運命』に阻まれ続けた。


 だけど……『魔法』は解けてなかった。


 皇子と神子……互いに重責から解き放たれ、私たちは『向き合う』ことが出来た。この『指輪』が、私と彼を繋ぎ止めたかもね。


「……っ⁉ ヒメナ、どうした?」

「え…………?」


 気づけば、私はポロポロと涙を零していた。やだな……恥ずかしいところを見られちゃった。


「レオ……女のコはね? 好きな男性ひとの前では、悲しくて泣いたりはしないよ。ずっとずぅーと、大好きなあなたから『婚約』を申し込まれたんだもん。嬉しいに決まってるよ」


「ヒメナ。それでは……」


 私は涙を拭い、彼の手を取った。



「ヒメナ・アンジェロ。謹んで、あなたの『婚約』をお受けします」


「ヒメナ……ありがとう」


 彼は私の頬に手を添えた。私はそっと目を瞑る。互いに指を絡め、重なる唇……もう絶対、この手を離さないよ。



       ◆ ◆ ◆ ◆


     ※※※ 手紙の続き ※※※


【――私と彼は、小さな村に落ち着いた。二人で農作業を手伝いながら、のんびりスローライフでも送ろうかな?(^。^;)


 彼に『婚約』を申し込まれて、驚き以上に嬉しかったよぉ(;つД`) まさか『こんな日』が来るなんて……けど、これは『現実』だ。


 私とレオは互いに諦めず、一緒になることが出来たんだ。落ち着いたら、いよいよ『結婚』かな( 〃▽〃)

 もちろん、みんなも呼ぶよ! イーグルは来るか、ギリギリまで分かんないけどね(;゚∇゚)


………………


…………


……


『追伸』 みんな……私たちを支えてくれて、本当にありがとね。みんなのお陰で、私たちはここまで来れた。

 私とレオは世界一、幸せになってみせるよ。だから、これからも見守ってくれると嬉しい。


 私とレオなら、心配いらないよ。二人で『同じ方向』を向きながら、共に歩んでいくから。


 だって私たちは……


 生きているだけで、幸せだもの】



                 ――Fin.





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【完結】捨てられ令嬢は、逞しく生きる ~追放された私は、真実の愛に目覚めた皇子と『駆け落ち』します。私たちは愛を育みますので、どうぞお構いなく~ たくミン☆ @takumin1110

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